越後白山 [雪山]


1. 山域・メンバー

山域・山名 川内/越後白山
ルート 慈光寺~尾根線~山頂往復
山行内容 尾根・雪山
メンバー L楡井、成海、松原、南山、大江、内山、小畑

2. 行動記録

記録 小畑
日程 2011/02/13
タイム 2/13 慈光寺集合7:00-稜線(3合目)8:30-5合目9:15-7合目10:00~山頂10:40~12:10大休止-14:30下山(慈光寺)

報告

 7人でのにぎやかな山行となり、充実した一日になった。締まった雪の上に新雪が積もり、程よいラッセルが楽しめた。新たな下山ルートが開拓できたことが収穫だった。

 冬の一日。人それぞれ、過ごし方はあるだろうけれど、我々は凛とした空気の慈光寺から一日を始めた。小雪の降る駐車場には我々の連ねた4台の車だけである。

 リーダーの楡井さんから行程の説明がある。「西側の尾根線から田村線を環状縦走する」予定だが、現地で状況判断をするとのことだった。

 尾根への取り付きはしばらく沢筋の林道を行く。雪崩た個所もあって、気を引き締める。トラバースは春夏秋冬を通じて、苦手だ。けれど、沈みがちな気分は杉木立の雪化粧が払ってくれる。

 尾根線の稜線は眺めがよい。振り返れば、大蔵岳・菅名岳・宝珠山・新潟市街・日本海・佐渡島・角田山・弥彦山。今日はいずれも雪雲の中だが、それでも眼下の見晴らしは良く、明るい尾根だ。5合目からは風が出てきて、頬を打つ。

 7合目からはいよいよ視界が悪い。トップの成海会長が赤旗を打つ。これで、「環状縦走はなくなったな」と思う。樹林帯を抜けると、冷たいというより痛い風に心を折る。いよいよ闘志を燃やすというような性格でないのが、我ながら残念だ。視界のない中で、さらに歩みは緩むが、赤旗は力強くなびいている。これを「無言の激励」と呼ぼう。


積雪比較1.12月初旬


積雪比較2.今回(2/13)

「白山避難小屋」の表札が雪面から顔をのぞかせている。別の言い方をすれば、「2階建ての小屋は2階の玄関が程よくなっている」となる。

 南山さんが灯油のストーブを持ってきていた。ガスストーブ世代の私にはとても興味深い。時代物の真鍮はにぶい輝きを放ち、貫禄がある。「ぐおっ~」という音が暖かい。話はそれるが、ちかごろ「物を大切に」とか「もったいない」という言葉がはやっている。車・家電・携帯・パソコンどれも高価なものだけれど、どれをとっても、「軽い」感じがする。真鍮のストーブには「重み」がある。「逸品」は丁重に扱おうという気持ちが自発的に起こるものだ。

 さて、小屋に奉納された「寒梅」を楡井さんと松原さんが戴くことで(奉納者了承済み)、安全祈願にして、帰り支度する。

 下山は天候も好転して、東側の尾根(田村線)も見える。転がり落ちるように、はしゃいでしまう。これに、ほどなく飽きる。登りは「山頂はまだか?」と道のりの長さを嘆くが、下りは「こんなに登ってきたっけ?」と思うほど、飽き飽きしてくる。そのため、下りにも休憩が必要だろう。風にさらされたまま休むのは体力が消耗してしまうので、これを「立ち往生」という。風を避けるため雪庇を崩して座る。そこにリーダーから声がかかる。「小畑、そこから落ちてみろ」と。殺生な話だ。だが、リーダーの言うことが聴けなくて、メンバーは務まらない。谷底までまっしぐらになっているわけではなく、下はゆるい尾根へと続く平地になっている。3Mジャンプする。雪庇は地面の上に雪が積もっているのと違って、雪の上に雪が積もっているので、崩しても崩しても柔らかく、手掛かりや足がかりが作れない。これはとにかく掘り進むしかないのか?白馬主稜の終了点を思い出す。楡井さんからシュリンゲが投げられ、これで簡易ハーネスを作る。「安全登山講習会」で習うやつだ。南山さんからお助けロープをもらって、ごぼうで登る。ようするに、一連の不可解な出来事は「安全登山講習」の実践編というわけだったのだ。次はきっと「落ちた人がけがをして、自力で上がってこられない場合」をやるに違いない。

 稜線への取り付き尾根との合流点まで来るとすっかり安全地帯。「ほっ」とする。大江さんがコーヒーを沸かしてくれる。ゆったりとしたひととき。休日の午後が訪れる。時間はたっぷりある。「このまま下りたら、もったいないし、つまらない」とリーダーは考えたのだろう。このまま尾根通しで、進んでみようと言い出した。降下点を誤ると、道路を1~2時間は歩くことになる。もしくは滝谷川を渡渉することになる。内山さんいわく、「今日は肥料袋を持ってきていない」。でも、行くのだ。これが楡井リーダーの相場と決まっている。雪が付いていればどこでも歩けるのが、冬山の良いところだ。送電線の鉄塔から先は大小の尾根があつまっていて、にわか仕立ての「地図読み講習会」になった。ルートファインディングをしながらの下山は足が進む。目測通り、ドンピシャで慈光寺と駐車場の間、下山側に林道がある橋と橋の間に降り立った。登頂と同じ喜びを味わう。一度で二度おいしいとはこのことを言うのだろう。

 こうして、仲間と過ごした冬の一日が終わった。最近、「無縁社会」というキーワードを耳にするが、今日も「無縁社会」とは無縁の山行だった。