1. 山域・メンバー
山域・山名 | 朝日連峰・大朝日岳周辺 |
ルート | 針生平から荒川~大朝日岳~北大玉山を経由して針生平 |
地図 | 朝日岳・徳網・羽前葉山(1/25000) |
山行内容 | 沢登り |
メンバー | (L)都丸、中山(峡彩山岳会) |
2. 行動記録
【総評】荒川の本流筋であり、連峰の最高峰・大朝日岳に突き上げている。中俣沢出合の二俣までの本流は何度かある高巻きの危険度が高く注意したいところ。登れる滝は比較的少ないが水と岩盤の美しさは感嘆ものだ。東俣沢に入るとゴルジュの発達は弱まって悪場は少ない。両岸すっきりとした草付きの中に登れる滝を多く掛け、源頭に至るまで爽快な遡行を約束する。トータルでは上級者向けだが、東俣沢だけなら中級クラスの沢という感想だった。1泊で抜けるためには相応に速やかな行動が要求される。1日目 二俣までの本流 前日夜に針生平に入ってテント泊する。隣に釣り師のパーティが泊っていたが、話を聞けば本流ではかち合わないようなので良かった。当日は朝6時過ぎに出発、大石沢出合までは1時間20分ほどの道のりだった。
狭い吊り橋を渡る 入渓後しばらくは河原が続く。序盤の大釜のある滝と続く滝を越えると再び河原になった。途中で前日から入っていたらしい釣り師のテント場を過ぎる。谷が狭まった箇所のトロは軽く泳いで通過した。9月も半ばを過ぎると水の冷たさが体を締め付ける。
支流が大きいせいか、荒川の水はみるみる減っていく。減水期とはいえ日帰りしてしまえそうな水量だ。滝沢出合あたりからは両岸が切り立ってきてナメと小滝が現れるようになり、やっと沢登りらしくなる。深い釜とトロを持った3m滝は右岸の側壁をトラバースして落ち口へ抜けた。水は透明度が高く澄み切っている。そのくせ釜はターコイズグリーンに色づいて深い。陽光に照らされて真っ白に輝く花崗岩の岩盤と合わせて、荒川の中でも特に美しい景観が続く。歩くだけで陶然とした気分になってくる。
右岸からごくわずかな水量の大滝を掛けて支沢が合わさり、廊下を少し行くと曲滝30mが轟々と落ちる。この滝は右岸のルンゼが最短の高巻きルートになる。中山さんリードで取り付いた。チムニーから草付きに抜ける箇所がシビアで、セカンドでも緊張する場所だった。
美しい渓相はまだまだ続く。綾滝8mが次の名のある滝となる。ここは私がリードし、右壁に取り付きトラバースして瀑水の下に頭から突っ込む。バンドを抜けて右岸のブッシュにたどり着いた。水流に近づく一歩が少し怖いものの、概ね楽しいトラバースルートだった。
トロの奥に3段の滝がかかっているらしい場所に来た。まず右岸のスラブに取り付いてみようと少し登るが、逆層で砂が乗っているスラブに恐怖心を覚え退却する。次は一応中を覗いてみようということでトロを泳いで奥を見に行く。3段の滝は2段目が絶望的だ。人工ならあるいはとも思えるが、相当の時間と体力を消耗するだろう上に登れる保証もない。引き返す。100mほど戻ってブッシュが近い所から大高巻きになった。落ち口へはクライムダウンで降りられる。
両岸さらに切り立ち、大滝2段20mが垂直のゴルジュの奥にかかっている。どうにかなる滝ではないので左岸のリッジからの高巻きになる。中山さんにリードしてもらう。下部は浮石多く、上部はかなりの急斜面で厳しい登りだ。1ピッチでブッシュに抜ける。そのままヤブの中をトラバースし、ルンゼを少し下ってから懸垂下降2回で沢に戻った。
二俣はすぐ上流だ。まだ時間も早く竿を出す。早速1匹ずつ釣り上げ二俣に着いた。私は東俣沢に、中山さんは中俣沢に入る。ほんの15分ほどで4匹釣り、トータル5匹になったので釣りをやめてテント場設置にかかった。中山さんは最初の1匹のみ。やはり虫の少ないこの時期はフライよりエサ釣りの方が良いようだ。快適なテン場で穏やかな夜を過ごす。星が良く見えた。
2日目 東俣沢
ヒノキモッコ沢出合を過ぎると10mの滝がかかり、左壁を気持ちよく直登できる。小滝をいくつか越え、両岸草付きスラブの中に8m、5m、8mと連続して滝がかかる。最後の滝は左側壁沿いチムニーがルートになる。チムニーの下は真っ暗な隙間が足元に続いていて底は見えない。万一にもこんな不気味な場所に落ちたくはないのでロープを出した。
岩の隙間からこんにちは
右俣との二俣に着いた。左俣は出合に8m滝を掛ける。ロープを出して取り付いてみたものの良い支点がとれそうもなく、左岸のブッシュに逃げる。少し登るとゴルジュ内に滝が2つほどあり、奥に大滝があるようだ。まとめて巻いてしまった方が賢明だと判断が一致してそのまま高巻きに入る。所々にあるシャクナゲとスギの密藪がきつい。これが5級のヤブ漕ぎだ、などとごまかしてもがく。二俣から50分ほどの高巻きで大滝の落ち口に達した。
滝上は両岸の傾斜も緩み優しい渓相になった。12m滝の左壁を快適に直登、続く2段20m滝は下段だけ登り、上段は右岸の草付から巻く。沢に戻るとトイ状のナメが続き、そのまま長大なナメ滝というかナメ床へと切れ目なく続いていく。東俣沢でも出色の美しい区間だ。花崗岩のフリクションは良く効き自在にルートを取れる。2条に分かれた特徴的な10mの滝、続く12mの滝を登るとちょっと難しい10m滝に着いた。中山さんリードで右岸の側壁をトラバースする。支点が取りにくく苦労しているようだった。セカンドでも落ちればかなり振られるので緊張するところだった。さらに8m直瀑、ゴルジュ内の10m滝と続きこの辺は登れず右岸の高巻きとなる。
源流部は両岸の傾斜はなだらかになり、紅葉の草付で開放的な景色が続く。小滝を越えていくと水もいつしか少なくなっていく。小屋の直下では水を取りたくないので、1600m付近で左岸から入る支沢の水を汲んで詰めに入った。窪が消えて草付を登っていくと登山道を見下ろすようになり、ザレ場と草原を横切って道に出た。
源頭から振り返る
小屋前の広場で大休止を取る。管理人と少し話をしたところ、前日から登山者が多く小屋はかなりの盛況だったそうだ。大朝日岳~平岩山~北大玉山と続く稜線は長いが展望もあり歩いていて気分が良かった。荒川を見下ろせば対岸には途切れ途切れに雪渓を残す険谷・毛無沢と西俣沢の全容が見渡せた。大朝日小屋から針生平までは5時間30分の道のりだった。
山頂から荒川を見下ろす
大朝日岳
記録 | 都丸 | |
日程 | 2009/9/20-21 2日とも晴れ | |
タイム | 9/20 | 針生平6:20~大玉沢出合(入渓)7:40~中俣沢出合BP14:40 |
9/21 | BP6:10~右俣出合7:20~大朝日小屋12:20-13:20~針生平18:50 |