北アルプス剱岳 [春山合宿・尾根]

1. 山域・メンバー

山域・山名 剱岳
山行内容 尾根
山行種別 会山行
メンバー L.成海  野村 和彦  伊藤 静  内山(峡彩山岳会)

2. 行動記録

日程 平成18年5月 3日 ~ 5日(2日夜発)
タイム 5/2 新潟市⇒(北陸道)⇒富山IC~太子宅(泊)
5/3 太子宅~立山駅⇒室堂ターミナル…雷鳥沢…剱御前小屋…剱沢小屋(幕営)
5/4 剱沢小屋…剱沢…長次郎谷…剱岳…平蔵谷…剱沢小屋(幕営)
5/5 剱沢小屋…剱御前小屋…雷鳥沢…室堂ターミナル⇒立山駅~富山IC⇒新潟市

報告(内山)

2日18時半、新潟発。前日に針ノ木雪渓での雪崩事故があり家の人の心配を受けながらの出発。スキー隊と計6名で富山市の太子さん宅に21時過ぎ到着。立山の方では4月末に新雪が50センチ積り変な雪崩が起きていると太子さん情報。

3日、立山駅6時半着。行列に並び8時発の室堂行き直行バスに乗る。曇っていたのが高原バスで標高を上げていくと雲を抜け、真っ青な空が現れた。今回のメンバーで剱岳初体験は私だけとのこと。見えてくる山々や左右の雪の壁を見飽きることなくきょろきょろしているとあっという間の1時間で室堂到着。ものすごい晴天。雪はガリガリではないが最初からアイゼンを着ける。上はシャツ1枚で十分。硫黄の臭いで温泉気分。まずは雷鳥沢まで下る。雪質は歩き易くルンルンだが登り返すことを思うと気が重い。雷鳥沢にはすでにテントが20~30張りほどもある。色んな斜面に登りついている人・人。鞍部から剱御前小屋へ登るルートは本日、白一色の山肌に蟻の行列が連なっていて間違えようもないが、ガスった時などはどっちへ行って良いか判らなくなりそうだ。日焼け対策に帽子と手拭いで頬かむり。折角の剱岳登山の写真がドロボーみたいななりで悲しい。登り始めると先行者のステップが残っており登り易い。急登の後にはちょうど良く台地があり2度の休みを入れて室堂から3時間弱の歩き、12時に剱御前小屋に着いた。ここからの眺めはとてもすばらしく青空に剱岳が白と黒のコントラストでばん!とそそり立つのに対し、奥のほうに白馬の方の山々が絵画のような柔らかい色合いで連なって見える。小屋でビールを購入。景色を楽しみながらしばらくのんびりし剱沢を下ること15分、13時に泊まり場到着。今まで幕営したどこよりも明るく広々としたテン場だ。境界がないのだもの。こちらはまだテントが5張りほど。みな雪のブロックを作って陰にテントを張っていた。あれほどの好天でも夜半になるとブロックがあって良かったという位の結構強い風が吹いた。テントを張り休憩した後ピッケルを持ち翌日に備えての歩行訓練。剱山荘までトラバースし別山尾根への斜面をピッケルとキックステップを用いてジグザグ歩行、稜線まで出た。稜線は所々岩とハイマツのような木が出ていて踏み抜くとはまった。このまま前剱まで行けそうな気分だが下って2時間弱の訓練を終えるとへとへとだった。泊まり場のトイレは奥行きのある立派な雪洞の個室が3つ(入口カーテン付)。あんなの初めて。この日20時前に就寝。

4日も晴れ。4時起床、5時半出発。登りはスキー隊と同一行動。沢はまだ日陰で風もあり寒い。長次郎谷出合まで標高差約550メートルを下る。下りながら剱沢の大きさ、広さを感じる。6時10分長次郎谷出合。7名揃って剱岳へ登り始めた。まだ気温が低く雪がしまっていて雪崩れる危険は低そうだが意識する。この谷にはすでに何パーティか入っていて、先行する八ツ峰登山者が取り付く峰々へ散って行くと長次郎谷を詰めるパーティはわが隊が先頭だ。スキーヤーなど何パーティかが後続する。2時間弱で沢の半ばの大きな二股(標高2430m)に出て山頂を目指すには左俣を行く所だが、左俣が雪崩で埋まっているではないか。これだけ落ち切っているからデブリのきわを歩こう、いや少し中間尾根から捲こうと協議の末、中間尾根からトラバースということになった。左俣のデブリは近くで見るとかなり大きく表面のでこぼこが激しい。トラバース後の稜線に向かっての登りは傾斜がきつくなりキックに力が入る。源次郎尾根で懸垂をする人や八ツ峰を行く人が良く見えるようになりこちらも緊張する。9時50分に主稜線に出る。やや強い風。トレースがはっきりあり嬉しいが、見上げるとかなり斜面が立っている。まず成海さんが偵察に行くが、太子さんが渡辺さんが呼ばれロープフィックスとなった。ほんの一部分が垂直に近い壁になっていてロープ2本分プルージックで登る。このような場面になると本当にメンバーに感謝する。頂上を目前にして偵察・ロープ工作から登り切りまで約1時間。急登の後は気持ちの良い稜線歩きを10分ほどで11時20分に山頂に到着。雪のベンチを作り乾杯。360度の眺めを堪能し12時10分にスキー隊と別れ下山にかかる。カニのヨコバイと梯子の待ち構える難所へ向かう。成海さんから鎖を手放さないように下を見ないようにと言われる。が見たくなるもので正直怖かった。アイゼンを着けた足元が心もとなく「怖いよお」といいながら下ったが下りてみるとあっという間だった。ほんの少しだけミックスをやった気分。12時45分に平蔵谷のコルに出たが谷を下り始めると雪が腐っていて膝まで潜る。ゆえにお尻で滑らせていただいた。こんな長距離シリセードをするのは後にも先にもないでしょう。13時半に剱沢に出て休憩。スキー隊はまだだろうと泊まり場への1時間半の登り返しにかかる。本日14時過ぎに到着した八ツ峰隊の出迎えを受けるころには力が尽きかけていたが、成海・戸貝さん特製剱なめこそばをご馳走になり、八ツ峰隊の意気込みを聞いている内に元気が出てきた。

5日、夜半からこの3日間で最も強い風が吹く。まだうす暗い4時半、八ツ峰隊はヘッドランプを点けて出発して行った。私達は帰るだけなので8時の無線交信を終えてから撤収にかかる。薄い雲がかかっているが晴天。真砂沢で行方不明者が出たとのことでヘリコプターが旋回している。9時過ぎ出発、剱御前小屋に9時50分。風が収まらずポリ袋やごみが飛んでいる。沢筋に荷物を転がす人もいる。天気が良いと気が緩みがちなもの。いよいよ剱岳は見納めだ。昨日あの頂上に立っていたのが不思議に思われる。雷鳥沢への下りはザラメ雪。嬉しいことに雷鳥のつがいに出会えた。雷鳥沢から室堂まで最後の登り返しは重い足をだましだまし登る。12時15分ターミナル着。観光客やら登山者やらすごい人の波。立山駅には14時45分。入浴や食事を済ませ帰宅したのは20時半だった。

(参考)アルペンルート交通費・高速・ガソリン代・共同・食料 締めて一人当たり1万円也。