1.山域 メンバー
山域・山名 | 八ヶ岳 |
ルート | バリエーション |
山行種別 | 個人 |
山行内容 | アイスクライミング、ミックスクライミング |
メンバー | L大江、楡井、戸貝、木村、伊藤(M)、内山(峡彩山岳会) |
2.行動記録
日程 | 2005年1月8日~2005年1月10日 | |
タイム | 1月8日 | 大江、楡井、戸貝、木村 美濃戸山荘~赤岳鉱泉(ベース)~裏同心ルンゼ |
9日 | 大江、楡井、戸貝、木村 ベース~大同心稜~ベース 伊藤、内山と合流 ベース~ジョウゴ沢アイスフォール~ベース |
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10日 | 大江、楡井、伊藤 ベース~中山尾根~地蔵尾根~行者小屋~ベース 戸貝、内山、木村 ベース~地蔵尾根~赤岳~地蔵尾根~ベース |
3.報告(大江)
1日目
今年は少雪のおかげで美濃戸山荘の駐車場まで車で入ることが出来て、随分楽をさせてもらった。
天気はいつもの冬の八ヶ岳らしく、ぬけるような群青色の空が広がっている。
赤岳鉱泉に到着してベースを設営し軽い食事の後、裏同心ルンゼへ向かう。
既に2~3パーティーが取り付いているが、我々が加わるのに問題はなさそうであった。
F1(15m)、先ず大江がWロープでリードする。続いて楡井がアッセンダーで登攀。木村、戸貝は楡井が確保する。その間、大江は一足先にF2の偵察に向かう。
F2(3段・40m)。楡井、大江ともにリードしたがるが、交代でリードすることにした。
2段目を登った頃、時間は4時半を過ぎ、日はまさに暮れようとしていた。しかし、楡井、大江とももう1段やりたくて仕方ない。それもそうだが、もう1段登らないと懸垂の支点がとれない。
楡井、大江が3段目まで上がり、懸垂ロープを垂らしF2を下る。
F1を下る頃、ヘッドライトが必要になってきた。
ベースへ向かう足は、初日の行程を無事終え、軽い足取りだった。
2日目
木村が「寝不足」を訴えている。楡井、大江のイビキに悩まされ、「眠れなかった」というが、正確に言うなら「楡井のイビキがうるさくて眠れなく、大江の可愛いイビキまで気になった」と、言うのが正解だろう。
この日、目的の小同心クラックは「ゆっくり出かけても充分だろう」と、タカをくくって、すっかり明るくなってから出かけた。
大同心稜の胸突き八丁の急登、木村が辛そうだった。大同心の取り付きから小同心稜へトラバースするが、どうも記憶が怪しい。八ヶ岳の経験不足に追い打ちを掛けるように、この時期の八ヶ岳にしてはやたら天気が悪い。雪、風、ガスで視界が悪い上に、戸貝のオカンが悪寒を訴え始めた。「取り付きまで行ければ一人でテントへ戻ります」と、言われても1人で戻すわけにも行くまい。
結局、大同心の取り付きまで戻り、後発パーティー(大同心南陵)に訪ねるが、確信はない。その1人が「もっとルンゼを回り込んだ所ではなかったか?」と言われ、俄然そんな気がしてきた。事実、その通りであった。
しかし、天気も思わしくなく、2日目から参加の内山、伊藤と無線連絡がとれ、「ベースにいる」と言うので今回は小同心を諦め、内山らと合流しジョウゴ沢へアイスクライミングに向かうことにする。
ジョウゴ沢のF1(10m)は相変わらず、新人研修のトレーニング場となっていた。ここは大江だけが中央をフリーで行き、他の5人は右を巻く。本来なら、当パーティーもここか、裏同心のF1辺りでシッカリ稽古をつけるべきなんだろう。
F2(20m)は正面の薄氷に内側の水流が透けて見える。ここは楡井、戸貝、大江がアタック。他の3人は「待っていると寒いので」と、右岸を巻く。もう少しチャレンジャースピリットが欲しいところだ。なんだかんだ言いながら戸貝はシッカリ登った。エライ!
楡井がビレイしている間に大江は一足先に上部の偵察に行くが、天気が益々思わしくなくなってきた。
ジョウゴ沢自体が風の通り道になっている。
「乙女の滝」「右ルンゼ」は先客が居たので「大滝」までと思ったが、みんな寒さにまいり気味なので、「ナイアガラの手前滝」にツェルトを張り、楡井の垂らしたトップロープで伊藤、内山が遊ぶ。
大江がフリーでアタックしたところ、シャルレで砕かれたアイスピースが鼻に当たり、鼻頭から出血。しかし、寒さのせいかモチベーションからか、痛みは全く感じない。これが本当の「出鼻をくじかれた」ってこと?。
30分も居ただろうか、風による体感温度の低下で下の滝へ移動することにする。この場の最後に楡井、伊藤、大江が「大滝手前4m滝」をそれぞれフリーで登りF2へ向かう。
F2は懸垂で下り、伊藤がアドバイスを受けながらリードする。しかし、スクリューに詰まったアイスが抜けず、思うようにくい込んでいかない。結局、イケイケでフリーで行ってしまった。仕上げに楡井、大江がフリーで登り、この日のクライミングをしめた。
3日目
L大江、楡井、伊藤が中山尾根(ミックスクライミング)。戸貝、内山、木村が地蔵尾根から赤岳(雪稜)をめざす。
中山尾根隊は4時前に起床し、まだ暗い5時半にベースを発つ。「中山乗越」からは下部岩壁まで、樹林帯の急登を登る。下部岸壁取り付きでは予定どおり7時にアタック体制が整った。
ここは今回のメインになったので是が非でも充実させたい。下部岸壁(30m)は楡井がリード(一昨年は本間、大江組で大江がリード)するも、いきなり最初の一手が伸びない。『こんなに難しかったかなぁ(大江)』ガイドブックには「右に少しおりてから左上する」とあるが、正面切って行ってしまった。この一手、ペツルにヌンチャクを掛けての一手でA0になってしまった。セカンドの伊藤はミックスはおろか、岩すら久しぶりで難儀をした。戸貝の気力を見習うべし。
下部岸壁の2ピッチ目はツルベで大江がリード。ここは草付きを巻けるが、1ピッチ目の確保点頭上のオープンブック状岩にルートをとる。一見簡単そうだが「開いた本の上」はホールドが少ない。
これを越えると約200m程雪稜。楡井がリードして3人、タイトビレイを結んで進む。
上部岸壁は大江がリードする。ここは上部出口がカブリ気味になっているが支点が多く、むしろ中段小テラス下部の方が難しく、約1名がゴボウで越えることになった。さらに200m、岩と灌木混じりの雪稜を詰めると、最後の岩(10m)に出る。一昨年は右の草付きを巻いたが、今回は楡井がリードでアタックする。大江はロープマンでセカンド。伊藤が確保でラストと続く。
12時、予定どおり登攀終了。ベースに着いていた内山に無線を入れ、記念写真だけ撮り、水も食事も摂らずにベースへ向かう。
この日も登攀中、どんどん天気が悪化し、風による体感温度の低下もあり、一昨年よりずっとグレードが増した感じであった。とは言え、下山路は充実感で満たされていた。
4.感 想
大江、伊藤は3日目のクライミングで軽度の凍傷を指先に受けた。ウール以外のグローブは汗で蒸れると、たちまち凍りつく。厚手のウールに、風があれば薄いゴアのオーバーが良いかもしれない。
足については、大江がウールのソックッスの下に、化繊の薄手を重ねていた。肌にウールがベストのようだった。
アイスアックスは、カジタックスのバナナピックの刺さりが良かった。シャルレ・クオークはやたら氷をぶちこわし、刺さりが悪い。先端をカジタのように加工が必要。
食事について、3日目の中山尾根のような、環境の厳しい条件になってくると、水も食事も摂れない。
いわゆる「極地法」に近い条件になってくると、その日の最初の食事がものを言ってくる。この日、大江、伊藤は米の飯。楡井はラーメン。個人差もあるので一概には言えないが、米は腹持ちがよい。ラーメンの楡井が最初にシャリバテとなった。
ここ数年、冬というと飯豊であった。飯豊もいいが、冬は日当たりの良いアルプスがいい。是非もっと多くの会員にアルプスに足を向けて力を付けていただきたい。