1.山域・メンバー
山域・山名 |
スコットランド・West Highland Way(154km) |
山行内容 | 海外トレッキング・登山 |
メンバー |
木村 |
天候 |
2.行動記録
記録 | 木村 |
日程 |
2023年5月21日〜6月3日 |
3.報告
5月21日(日)・22日(月)
21日、新潟を昼過ぎの新幹線に乗り、東京の息子宅で夕食の後に羽田空港へ向かう。
22日朝9時過ぎのフライトなので、羽田空港の静かな場所を探してシュラフに包まるが、深夜発のアナウンスや人の往来があり仮眠程度で朝を迎える。6時過ぎにチェックインし、ザックを預けると17kgだった。現地でガスや水等を加えると20kg近くになるだろう。
定刻より30分遅れで離陸し北を目指す。ウクライナ紛争の関係でロシア領空を飛べないので、ベーリング海峡のアラスカ寄りから北極海、グリーンランド、アイスランドを通過し、イギリスを南下してロンドンのヒースローでグラスゴー行に乗り換え。この時にスコットランドを通過するのだが、今回のトレッキングルートの上を通過するようだ。時速900kmで飛行しているので、僅か10分でスルー。
ロンドンに現地時間で22日の16時過ぎに到着。ターミナルを移動しグラスゴー行きを待っていると、なんと1時間半の遅れでグラスゴー着となり、ホテルに着いたのは23時過ぎとなった。
5月23日(火) 曇りのち晴れ
9時過ぎの電車に乗り、Milngavieムルガイに到着。いよいよウエストハイランドウェイのスタートだ!マップ、食料、ガスを買い水も詰め込む。ガスはロング2,000円レギュラー1,300円もする!サンドウィッチも具が多いと800円だ! お決まりの出発写真を撮り10時にスタート。重くなったザックを担ぎ、ゆっくりと歩き始める。
宿を予約して重たい荷物は移送するサービスもあり、軽いザックでスタスタと歩く人も多く、様々な年代の人々が歩いて行く。
今日はDrymenドライメンまでの18km。
街を抜けると牧草地となり、その中の道を進む。少し起伏もあるが歩きやすい道で花が綺麗だ。それとワラビがそこら中にはえている。
ヒツジも食べないし人も食べないようだ。
15時40分キャンプ場に到着し、料金1,800円支払う。ビールはあるかと尋ねたら、2km先の街まで行かないと無いよ!と笑顔で返される。まずはテントを張り、「どうする家康」とばかりに思案するがここはやはり「出陣じぁ」と鬨の声をあげる。この熱意と行動力が仕事をしている時に活かせていたらと思いながら歩き出す。がしかし、しばらく歩いていると2人連れのおっさんキャンパーがコンビニの袋を抱えて戻ってくる。こっち方面の情熱は万国共通なのだと実感する。
コンビニでトマトやパン、缶ビール4本とワインも1本買ってしまう。温くならないよう急いでキャンプ場に戻り、缶ビールを飲む 旨い! だが、睡眠不足と疲れもあり1本で寝てしまった。
5月24日(水) 曇りのち晴れ
前日は8時に寝たが、寒さで2時頃目を覚ます。雨具を着て再び寝て5時半に起床。13張りのテントがあるが、1人しか起きてないようだ。今日はBalmahaバルマハの先のキャンプ場迄の15kmだ。
途中、コニックヒルという360mの丘を越えて行くのだが、缶ビール3本ワイン1本が加わり、ずっしりと重いザックを担いで8時に出発する。道は広くダラダラと続くが、登りにかかるとヘロヘロとなる。追い抜かれざまに「重そうだけど何キロあるの?」と聞かれ、缶ビール3本ワイン1本入っているので22kgくらいと答えると「クレイジー!」と呆れられる。
なんとか丘を越え、イギリス最大の湖であるローモンド湖沿いのキャンプ場を目指す。3か所あるのだが、疲れたので一番手前のキャンプ場に決めて15時に到着。料金1,800円。隣のテントはサイクラーで、「ビールを買おうと思ったけど無いんだ」と言うので軽量化の為1本あげると、ポテトチップスを頂いた。
ぬるいシャワーを浴びてビール、ワインを飲んでいると、若者達がやってきてたどたどしい会話となった。グラスゴーから来たそうで、グラスゴーのサッカーチームで前田大然、古橋享吾らがいるセルティックスかレンジャーズどっちのファンだと聞いたらレンジャーズのほうが多かった。
5月25日(木) 快晴
5時に起床し朝食の後撤収を始めるが、Midgeミッジというブヨよりも小さいアブが血を吸いにまとわりつく。こいつにはこれから散々に悩まされる事となった。
7時45分出発。今日はローモンド湖沿いに22kmほど先のInversnaidインバースネイド迄だ。
樹林帯は心地良いが、抜けると陽射しが強く汗だくになる。湖沿いなのでアップダウンもそれ程無いのが救いだ。16時半に到着するが、キャンプ場のあるバンクハウスは更に1.6kmの登り道の先だ。
高そうなホテルでビールを飲んでから踏ん張りを利かせて18時に到着。料金1,800円、朝食とお昼のランチパックも頼み、プラス3,600円。夕方もミッジがしつこい程に群がってくる。シャワーを浴びてネットを張りめぐらした休憩スペースで夕食とビール&ワイン。隣のテーブルにいたドイツ人カップルは、彼氏のほうが足を痛めてリタイア。残念だけど近いからまた来るとの事。近いから良いよなぁ!
バンクハウスにはバーがあり、宿泊している人達の賑やかな声を聴きつつ10時就寝する。
5月26日(金) 快晴
6時に起床、8時から朝食なのでその前に荷物をまとめだす。が、パスポートを入れたウエストバッグが無い! 寝る前にトイレに入ったので慌てて建物のトイレに駆け込むと、ありました!
場所が場所だけに運が良かったのでした。ホッとしたので朝食をワシワシと食べ、ランチパックを受け取り9時に出発する。その際に日本語で「気をつけてね」や「さよなら」との声を掛けられる。今迄の道中、抜いたり抜かれたりで顔見知りというか、しょうゆ顔で一筆書きのような自分の顔はすぐ覚えられるのだろう?
ルートに戻り20km先のCrianlarichクリアンラリッチを目指す。途中でスコットランドの正装であるキルトスカートの若者と出会う。しばらく歩いて行くとローモンド湖と別れ、いよいよスコットランド高地(ハイランド)へ向かう事となる。Beingias Farmビーイングラスファームでお昼とビールを楽しむ。先程のキルトの若者と記念撮影。2人連れでロビンともう1人はジョウイ。オランダから来たとの事でこの恰好がしたかったんだそうだ。更に20年前に4年間日本に仕事で住んでいましたという親子連れのお父さんに話しかけられる。上高地から北アや富士山を楽しんだそうだ。
残り11kmの道は平坦だが国道や線路と並行しており、あまり魅力を感じない行程だった。クリアンラリッチへはルートを外れて1.6km下った小さな町で、先ずはコンビニでビールや食料を買い込む。
店の人にキャンプ場は何処かと尋ねたところ、キャンプ場は無いよとの答え。マップの記号はキャンプ場では無くユースホステルだったのだ。するとそこへロビン達がさっぱりとした感じで買い物に来た。
今日は何処?と聞くと、「ユースホステルでシャワーが快適だよ」との事。テント3連泊なのでユースも良いなぁと思い、空いていたらとトライすることに。建物の前で今度は顔見知りとなった夫婦連れとバッタリ。受付で並んでいたら夫婦連れの方が私達は予約しているから先にどうぞと言ってくれたが、順番だからと後ろに待っていたら、親切にも私達の友人なんだが空いているかと聞いてくれた。
しかし、満室との事。登り道を1.6km歩いて野宿かぁと思ったが、やはりここは「どうする家康」とばかり思案のしどころで、ダメもとでさっきのお店のオバサンにこの辺でB&B(ベッド&ブレックファスト)は無いかと尋ねてみた。すると、旦那さんにも声を掛けて2人で電話で聞いてもらっているが、どうも何処も満室のようだ。旦那さんの4軒目の電話で1室空いてるとの事で、奥さんが「大丈夫、うちの旦那に遅らせるから」と有難いお言葉!
場所はルートを10kmほど進んだTyndrumティンドラムで、ランチパックも付けて11,000円。
朝も夕方も運のよい1日で、洗濯をしてふかふかのベッドで熟睡しました!
5月27日(土) 快晴
8時にスコティッシュブレックファスト。隣はオーストリアから1人で来た可愛い女子。隣のテーブルはオーストラリアから1人で来たおばさん。ランチパックを受け取り9時半に出発。
今日の目的地Bridge of Orchyブリッジオブオーキー迄は10kmちょいと最短距離の一日だ。
街を抜けて樹林帯の中を進む。苔むした景観に気をとられていたらルートを外したようで、20分のロスとなった。後は国道と線路と並行した単調な道となり、一層暑さを感じてくる。土曜日なので国道は北へ向かう車で一杯だ。途中で女性の単独者と前日も一緒に前後したおっちゃんと交互に歩く。ホテルに15時過ぎに到着し、先ずはビールだ。
混んでおり女性の単独者とおっちゃんが同じテーブルでやはりビールだ。女性はドイツからで、おっちゃんはイングランド。2人ともテント泊だ。その間にも顔見知りが続々と到着して声を交わす。
2人は4kmほど先のInveroran Hotelインバーロランホテル迄行ってテントと言っていたが、こちらは橋のたもとの芝生にさっさとテントを張ってまったりと過ごす。川沿いなのでミッジがしつこい!ホテルのバーでもう1杯ビールを飲み、五目御飯と味噌汁で夕食。やっぱ日本食は旨いとしみじみ感じるが、まだ先があるので調子に乗ってホイホイ食べないようにと思いながら就寝。
5月28日(日) 快晴
満足して寝たが、4時頃に寒さで目を覚ます。かなり冷え込んだようで今迄で一番寒い。樺太の北端よりも北なのだから当然と言えば当然なのだが、ガスで暖をとる。
じっとしていてもしょうがないので早めの7時に出発した。今日はKings Houseキングスハウス迄の20kmだ。インバーロランホテルの売店でサンドウィッチとジュースを購入し、先を急ぐ。
この辺りからスコットランド高地の景色が広がって来る。日本には無い景観だと思う。今日はカラッとして汗もかかず快適で、ペースも早いなぁと思っていたが、それでも続々と抜かれてゆく。
一昨日のテン場で隣りに居た夫婦連れに合う。ドイツから来ているそうで、キングスハウスはシャワーが無いようなので、手前のGlencoe Mountain Resortグレンコーマウンテンリゾートの方が良いと言われ、そうこうしている間に単独のドイツ女性にもバッタリ。やはりグレンコーにするというので迷わず変更する。14時半に到着し、ロッジでビールだ。冬場はスキー場で夏場も観光リフトとして稼働しており、大勢の観光客で大賑わいとなっている。
グレンコー渓谷はハイランドエリアの中でも屈指の観光名所として知られている場所であるとともに、1692年にスコットランドの氏族間で、親イングランド勢力のキャンベル氏族が無防備なマクドナルド氏族を虐殺した事件があり、その悲劇の舞台となった渓谷としても有名。因みに、グレンコーはスコットランドの言語ゲール語で「嘆きの峡谷」という意味。
5月29日(月) 快晴
6時に起床し撤収準備に取り掛かるが、ミッジがまとわりついて凄い! ちょっとでも気を許すとすぐに喰い付いてくる。防虫ネットを用意しておいて助かった。ドイツから来た夫婦連れは今日中にラストのFort Williamフォートウィリアム迄行く予定との事。手前のキャンプ場迄でも37kmの長丁場だ。
途中にエスケープルートは無く、奥さんに大丈夫か?と尋ねたらなんとか頑張ると答え、ドイツでもロングトレイルをやっているとの事。全く逞しいもんだと感心する。
8時に出発。今日はKinlochlevenキンロックレーベンまでの16kmだ。朝日を受けたグレンコーが美しい。2km先のキングスハウスホテルに着く。なんと小さいながらシャワーはあったが、売店は無くてホテル館内も高級そうな感じで食料の調達は出来なかった。残念。
しばらく国道沿いに進むと、このルート最大の難所と言われているDevil’s Staircaseデビルズステアケース「悪魔の階段」という登りに差し掛かる。けれども、道は広くてジグザクとなっており、傾斜も大した事はなく、ゆっくり登って最高地点でコーヒーブレイク。ハイランドらしい景観が広がり、快晴の絶景を堪能する。後は8kmを下ってゆく感じなので、のんびりと景色を楽しみながら歩く。
15時過ぎにキンロックレーベンに到着。先ずはパブでビールだ! あまりにもがっついて旨そうに(うんまげに)飲んでいたら、隣の年配グループに笑われて話しかけられた。イングランドから来たそうで、イギリス国旗の折り紙をプレゼントしたら滅茶苦茶喜んでくれた。もう一杯ビールを頼む。
途中で快適そうなキャンプ場を通り過ぎたのだが、ふかふかのベッドも良いなぁと思い、パブ兼B&Bだったので泊まれる?と聞いたところ、ツインルームしか空いてなくて、23,000円との事。一気に酔いも覚めて、他を探すが満杯のようだ。仕方なくコンビニで食料とワインを買い込みキャンプ場に戻る。
シャワーを浴びてスッキリし、残るは後一日だ!という気の緩みがあったのだろう。ハムとチーズをツマミに調子こいて1本空けてしまった。テントに戻り爆睡!? だったが夜中に寒くて目が覚めた。
なんと、シュラフに入らず寝てしまった。
5月30日(火) 快晴
起きると喉が痛く鼻水が出て、これからずっとティッシュペーパーが離せなくなってしまった。
今日は最終日だが、翌日のベンネビス登山を考えると、ゴールのFort Williamフォートウィリアム迄の25kmより手前のキャンプ場が良いと判断。それでも21kmはある。
鼻水をすすりながらひたすら歩く。途中で単独のドイツ女性(エレナ)とばったり。同じく単独でオーストラリアから来たおばちゃんと3人で歩く。みんなでゴールしよう! みたいな話になり、宿はなんとかなるかなぁと思いそうすることにした。が、これが大誤算であった。
イギリスでは5月29日がバンクホリデーという休日で、行楽シーズンの真っただ中だったのだ。
フォートウィリアム街に入りB&Bを探す。以前2回来た事があるので、めぼしいところをあたるが全てNo Vacancy空室無しの表示。とりあえずゴールはしたがトホホとなる・・・
先ずはパブでビールを飲んで一段落だ。外のテーブルで飲んでいたら、前日のイングランドのおばちゃんたちとバッタリ会い、ハグ! あまりノンビリともしていられないので、キャンプ場へ引き返す事とした。途中で空室有りの表示があったが、17,000円と馬鹿高いので却下。20時も過ぎて疲れ果てたので、キャンプ場は諦めて適当な空き地を探す。川の対岸に住宅地があるが、まぁいいやと思い木陰に隠れてテントを張り、22時就寝。
5月31日(水) 快晴
4時頃人の声で目を覚ます。散歩中の住人に見つかったようだ。意味はようわからんが、こんな所にテント張るなんてという非難めいた感覚は伝わった。気配がなくなったので、即撤収しトンズラする。
今日はイギリス最高峰のBen Nevisベンネビス1,345mに登るので、重いザックを草むらに隠していたら、なんとロビン達と再び遭遇。彼らもベンネビス登山という事でスタスタと歩いていった。
こちらは風邪ひきのうえ、朝飯もとれず食料はトマト2個と柿の種の小パック2個にチョコとポテトチップスという情けないラインナップだ。折り畳みのディパックに貴重な食料を詰めてトボトボと歩き出す。6時に登山口に着き登り始めるが、ピッチが上がらない。フォートウィリアムからだと海抜0mなので、実質まるまるの標高となる。
頂上直下でロビン達とスライドする。朝飯食ってないから調子が出ないと言うと、エナジーゼリーとクッキーをくれた。こちらもお返しに柿の種小パックを渡す。10時過ぎに頂上に到着。20年ぶり3度目の頂上だ。長かったトレッキングもこれで完遂だぁと思うと感慨深いものがある。たが、体調は最悪で鼻水たらしながら下山を開始。途中で、イングランドのおばちゃん達と再びバッタリ。更に下山して街に向かう途中でイングランドの単独のおっちゃんとも再会した。
予約していたホテルにチェックインして一寝入りし、街で夕食とビール。ゴミ箱がティッシュで満杯になって就寝。
6月1日(木)~3日(土)
1日はフォートウィリアムからグラスゴーまで電車。8日かけて歩いた道のりを4時間で戻る。が、途中で「この電車はトラブルによりこの駅で運行を停止する」とのアナウンスがあり、せっかく座れていたのに30分ほど満員電車でグラスゴーに到着。
おとなし目にビールとウイスキーを飲んで早めに就寝し、翌2日にロンドンのヒースロー乗り換えで3日の夕方に羽田に到着。乗り継ぎもスムーズに進み、21時半に自宅に到着。
ウォシュレットのトイレと湯舟にゆったりと浸かり、ホッとしました。
疲れたが、念願のトレイルを歩けた事、たどたどしいなからも色々な人とのふれあいを楽しめた事。満足で一杯のスットコドッコイな旅でした。
後日談 風邪の症状は重くはないが1週間と長引きました。
時差ボケも爺さなので5日ほど続きました。