守門岳(大岳)[山スキー]

1. 山域・メンバー

山域・山名 守門岳(大岳)
ルート 二分~保久礼小屋~山頂往復
地図 穴沢(1/25000)
山行内容 山スキー
メンバー (L)渡辺、戸貝、都丸、楡井(峡彩山岳会)

2. 行動記録

記録 都丸
日程 2008/3/2
タイム 3/2 二分7:48~保久礼小屋9:25~大岳山頂11:53-12:23~標高1100m付近12:35-13:05~二分15:30

報告

後輩にも刺激されてそろそろスキーをはじめてみようかと思い立ったのが去年末。大枚はたいてテレマークの道具一式を揃えた。今年に入ってからはほぼ毎週のゲレンデ通いでそれなりに腕をみがき、今回の山スキーデビューへとこぎつけた。冬山自体が素人のようなものなので、装備にしろ技術にしろ、一から教わりながらの山行となった。

はじめてのシール登高


(1)積雪3~4mくらい


(2)林を抜けて

 二分の駐車スペースに着いて準備する。ワックスを塗ってシールを張って……何事も初めてやる作業だ。後から来た別のパーティーはさっさと支度を済ませて上がっていった。遅れて楡井さんが合流する。

歩き出すころに雪が降ってきた。風はない。林道の緩い斜面を歩き、シールで歩くとはこんなものかと納得する。が、つづら折の斜面になって斜度が上がってきたところでずるっと滑る。何度か足を踏みかえるが上手くいかない。後ろの楡井さんからは、スキー全体で漫然と歩くのではなく、体重を掛けてしっかり踏み込んで行けと言われる。その通りにやると今度は雪面をがちっと捉えてくれた。足の使い方一つでこんなに変わるものか。

体温調節が重要だと渡辺さんには言われていた。なるべく汗をかかないようにとも。確かに登り出すと体温が上がるのが早い。耳当てもマスクも早々に外し、アウターのチャックは全開に近くなった。

尾根から沢を渡り、ふたたび尾根に移る。保久礼小屋は3~4mの積雪があった。休んでから先行者のトレースを利用して登りはじめる。樹林の間を抜けて静かに登高は続く。本当に静かだ。生きて呼吸しているのは自分たちだけと思えるような死の世界は、常に動きのある夏の沢とは真逆に感じられた。

木々が薄くなるころ、休憩を兼ねての弱層テストを行った。まず渡辺さんが斜面を1m以上掘り崩す。雪の断面を触ると明らかに硬くなっている層が分かる。気温が上がった数日前に解けて固まった層だろうと渡辺さんが推測した。ハンドテストを試みると、硬い層よりもずっと下の方で雪の柱が切断された。自分でもやってみる。わずかな力を加えただけで、同じ層で簡単にずれて落ちた。おおまかな所を判断してから、雪観察セット「ゆきみちゃん」を使って結晶を観察する。覚えることは多い。ともかく以上の結果から雪崩の危険が高いということで、沢の滑降も考えていたという渡辺さんはそのプランを放棄した。


(3)振り返る

 森林限界付近になると、時々曇が切れて視界が広がるようになる。景色が見える方が気持ちいいし、目標のない雪山で視界が効かないのは不安になるものだ。

淡々と上がっていくと、滑降してきた先行者とすれ違うようになる。近くでテレマーカーがターンを決めた。上手いものだ。木々がなくなるといよいよ冬山といった景色になる。ここまで、初めてにしてはペースが早いとの評価を戸貝さんから頂いたが、山頂直下になるころには大分くたびれて足を上げる力も落ちていたと思う。もっぱら足元を見ながら山頂はまだかと思い黙々と登る。

大岳山頂は誰もいなかった。先に着いていた渡辺さんが足元を少し掘り下げて即席の宴会場を作る。乾杯タイムでビールを頂いた。この寒いのにビール? とも思ったが、汗をかいて喉が渇いていたので予想外に美味かった。次は持ってこよう。早めに腰を上げ、ブーツを締めていよいよ滑降に移る。

はじめてのバックカントリー


(4)山頂近い


(5)滑降開始

 山頂直下は遮るものもなく、視界はそこそこ効く。クラストした雪面はゲレンデの非圧雪斜面ともまったく違うもので、そこそこ滑りやすいが、たまに吹き溜まりのような場所があってあっさり転ぶ。変化のある雪面は難しい。もっともテレマークの技術自体がまだまだなので仕方ないが、ともかく見た目は悪くても転ばないようになんとかついていく。少しブッシュが出てきた場所を休憩地点とし、腰を降ろした。湯を沸かしたりしているうちに渡辺さんが空身で登っていく。体を温め、少し遅れて着いて行くことにした。やはり空身だと楽だ。降りてくる渡辺さんとすれ違った地点で登高をやめて滑降する。渡辺さんはまだまだ登れるということだったが、私は体力的にももう十分というところだった。

下りは木が出てきてからがむしろ難しかった。思い通りのタイミングでターンできるわけではないので、スピードを殺し、頻繁に止まって安全なルートを探さなければならない。激突こそしなかったが、大木を回り込もうとして右足スキーの先端が幹に引っかかり派手に転倒する。ここでスキーは木に引っかかったままで体を投げ出すような形になり、体重をぜんぶ受け止めた膝に嫌な痛みが走った。なんとか立ち上がるが、その後は膝をかばいながらの滑降になりますます不恰好なものとなった。中間地点から下は尾根が細くなり木の密度も高くなるのでさらに苦しかった。最後は登ったルートの手前から斜面を降りた。雪さえあればルートを自在に取れるのが山スキーの自由なところだろうか。

今回は実質最初の雪山、山スキーということで、楽しさより緊張の方が多かった。もっと自在に滑れるようになれば感想も変わるのだろう。もちろん機会があればまた参加したい。今回はリーダーや戸貝さん、楡井さんにはいろいろな場面で助けていただいた。ありがとうございました。