北信・頚城/佐渡山[山スキー]

1. 山域・メンバー

山域・山名 北信・頚城/佐渡山(中退)
ルート 大橋駐車場~黒姫山登山道分岐~1673m~林道~大橋
地図 高妻山(1/25000)
山行内容 山スキー
メンバー (L)渡辺、小畑 (峡彩山岳会))

2. 行動記録

記録 渡辺
日程 2008/2/24
タイム 2/24 大橋7:20~黒姫山登山道分岐8:35~取付尾根末端9:10~1673m14:10-14:30~大橋15:05

報告

富山の太子さんから乙妻山のお誘いがあり、新潟からもう一人と相棒が得られたので、喜んで「行きます」と返事をした。乙妻山北東斜面はネットでも書籍でも記録が多く、標高差900mの一枚バーンと云う事で、山スキーを始めたころから行きたかったコースだった。

週後半に低気圧の通過があり土日は完全な冬型。大荒れが予想される中、飯豊・二王子で鍛えたラッセルがどこまで通用するか、新雪の深雪に我々のスキーの腕がたちうち出来るのか、初めてのメジャールートに期待は膨らんだ。

前夜

前日16:30、三条で小畑君と待ち合わせて信濃町I.Cに向かう。予想通りに大荒れの、かなりの強風で運転も神経を使うが、上越JCTを過ぎると風向きも変わり楽になった。路面は圧雪だが雪量はさほどでも無く、帰路の通行止を懸念する事は無さそうである。信濃町で食料の買出し、外は地吹雪、今晩は佐渡山鞍部にテントを張っている太子さんはどうしている事だろう、明日は乙妻山には向かえないだろう、と思った。

ここから戸隠に向かう道路は初めて。凍結を心配していたが圧雪で、降雪直後だが除雪もされており、これには助かった。橋を過ぎるが確認のためキャンプ場まで行き、戻って駐車場に富山ナンバーの車もあったので大橋と確信、夜道のアプローチは落とし穴があるのでひとまず安心した。しばらくすると太子さんから電話が来る。新雪40センチ、あすは撤収する、との事であった。連絡が取れて安心したのであるが、ここも佐渡山も、携帯が使えることに驚いた。今日は車中に余裕があり、泊まりは快適、焼肉である。

取付尾根末端まで

5時に起きると新雪20センチだった。乙妻山に行くならもう歩かねばならないが、昨日の時点で乙妻山は却下したので明るくなるのを待つ。今日は佐渡山周辺か、黒姫山に向かうかのどちらかである。山としては黒姫山の方が面白そうであるが、太子さんとも会いたいし、とりあえず林道を分岐まで進んで再度連絡を取ることにする。

我々2人が今日の先頭である。雪は膝下、佐渡山すら届かないかも知れない。もっともこの風では、何処に行っても上部は行動できないであろうが。しばらくすると後続の2人が追い付き、ラッセルを変わってもらう。2人の行き先は判らないが、4人なら林道はもう楽勝だと喜んだのも束の間、ラッセルを一回りしたら彼らは付いて来なかった。左に分岐がありその先に橋が見える。黒姫山の分岐を疑ったが、まだ時間的に早い。視界が無いので地形からは判断できず、とりあえず怪しそうな左に向かい、地図を取り出す。ここで太子さんに電話する事を思いつき、分岐はもっと先、と教えてもらった。

分岐で林道がY字型に分かれると、今日の行き先を決めなければならない。この風でピークには立てないのはどちらも同じ。滑りは黒姫に分があるが、風が回りこみそうで強いと思う。佐渡山の方が風は弱そうで、そこそこに広そうな尾根もある。太子さんにも会いたいし、会えばそこから鞍部まではラッセルが無い。佐渡山に決めた。

5分も行くと、登山者が降りてくる。やはり鞍部に泊まったとの事。トレールが左にカーブして辺りを見渡すと新潟と比べて藪は薄い、標高が高いからであろう、これなら滑れると安心した。尾根末端で太子さんと出会い、総会以来で話が弾む。太子さんが降った尾根では無く、1本手前を往復したほうが良い、とアドバイスを貰った。トレールを使って鞍部まで行って佐渡山に向かい、途中尾根から下降するコースを考えていたのだが、富山の方も混じって検討していただく。考えていたコースは、現地で本当に下降地点が判るのか確証が無い事。太子さんが降った尾根は、細くてスキーには適さない事。何より往復であれば、何処で止めても出発点に戻れる事。太子さんのトレールを捨てるのは勿体無かったが、確かにこの悪天候では往復コースがベストである。ラッセルを嫌がって危険度を増やすようでは、そもそも山スキーをやる資格など無いのだった。富山の人たちにもアドバイスを戴いて有り難い、太子さん以外は初めてだったが話が尽きない。今回は残念だったが、次回ぜひ山行をご一緒したいと思った。

1673mまで

ラッセルは厳しいけれど、今日は2人なので気分は楽だった。左の対岸が時折見え、帰路は良い目標になるとのアドバイスを思い出す。傾斜が立って来て滑りの期待が膨らみ、ラッセルの苦労が軽減された。問題は、スキーの腕が付いていけるかという事である。

1時間ほど歩いたところで休憩、2人でピットを掘る。小畑君はピット掘りが初体験であるが、私も今シーズンから始めたばかりで、助言が余り的確ではなかったかと思う。80センチ下で、やや弱い層が有ったので他も掘るが明らかではなく、大丈夫と判断した。判断の知識や経験が不足しているのは承知、それはこれから積み重ねるしかないが、まずピットを掘る習慣をつけることが大切と心掛けている。休憩したらピット、急斜面の前にピット、とにかく怪しいと思ったらピットである。


【ピット掘り】

 尾根型が消え、斜面になった様子。右手に進路を延ばして尾根に出ると、途端に風が強くなった。ラッセルは楽だがしばらく行くとクラストしている。もうここを滑ってもつまらないので左の斜面に入る。10m降りてピットを掘ると、新雪の30センチが弱い。その下は安定していたので、下降して吹溜まりが無くなればOKと判断した。シールを剥がして下降に掛かるが、それでも最初は斜滑降で高度を下げる。30m程下って所でスタート、一人づつ滑った。成程これは楽しい、絨毯の上を滑るようであった。お互いに監視をしながらなので、一度に長距離を滑れないのが惜しい。最後は右に寄り過ぎたので左に修正して登りのトスースにでるが、修正の斜滑降が勿体無かった。2回目の登りはトレールが使えるので楽、右から尾根に出たところで滑った。地形の按配が掴めたので落差が大きく取れ、1回目より上出来であった。

軽量化を(一応)考えビールは250mlであるが、今日はこれで丁度良かった。時間は12:45、この天気で山行できた事は満足で、小畑君に聞くと「もう帰ってもいい」と言う。私は確かに面白かったが、装備を揃え、ラッセルをして、ピットを掘り、その結果として得るものとしては物足りなかったのが正直な感想だった。しかも、スキーが下手だから滑りを味わえないだけなのか、もっと高い所から滑らなければならないのか、自分は本当の楽しさにたどり着いていないのではないかと悩んでいた。トレールはあるので1時間登れば相当進める、もう1回滑りたかった。だが相棒は帰るモード、明日は仕事だからこの時間で帰れば楽なのも一理で、無理をすると次から誘っても来てくれないかも、と思っていた。

そうしたらボーダーが2人登ってきた。この先には誰も居なく、上部は風があったと話して別れる。子供の水筒に入れたお湯はもう冷め加減だが、お湯割には飲み頃だった。若干、風が落ち着いた様にも感じられる。ボーダーは何処まで行くのか、この天気でも登ってくる人がいるのだと感心した。う~ん、もう1回滑りたい。それに自分らが一番でラッセルしたのに、それより上に行く者がいるのは更に不満である。小畑君に打診して、3回目を滑る事になった。

先と同じコースで右の尾根に上がり、クラストを過ぎるとボーダーが見えた。いつの間にかクラストは無くなりラッセルの尾根になる、これなら滑れるが上部の方が積雪があると云う、地形の妙が不思議だった。ボーダーは苦労している様子、足回りはスノーシューで、別れた時間を考えると殆ど進んでいない。正月以来の疑問だったが、やはりスノーシューは膝を越えるラッセルで仕事が出来ないのだろう。先頭を変わると視界も出てきた。どんな時でもこの瞬間は、今日も来て良かったと思うのである。小畑君も追付いて来た、ボーダーに峡彩のラッセルを見せねばと力が入るのであった。

14:00を過ぎそろそろ時間切れ、先に傾斜の緩みが見えたのでそこまでと決める。左から緩い台地状地形が合わさり、ここで終了した。地図上の1673m地点付近とかと思う。


【本日最高点、視界がチトありました】

1673m~大橋

まもなくボーダーも到着してここまでとの事、皆で健闘を称え、山の景色を愛でる。1738峰くらいは見える様子だった。2人が先発して、ワンクッションおいて後に続く。この景色と自分達の上に行った者はいない点で、3回目のトライは既に報われていた。だが滑りはまだ満足ではない、パウダーは本当に面白いのか、今後もラッセルをして来る価値があるのか、はたまた自分が下手なだけなのか、これを滑れば何か判るかもしれない。スタートは尾根上を行き、右斜面に入る。今日一番良い。2人なので相棒の写真も撮れた。

【パウダーは楽しい事が判った滑り】

 続いて斜面を進むと、ここからが今日の圧巻であった。とにかく面白い、面白いとしか言いようが無い、パウダー最高だ。銀マットとエアーマットの違い、いや普通の雨具とゴアテックスとの違いくらいあるかも知れない。前2本とはそれくらい違うほど面白かった。

ああ、これですべてが報われた。新潟から出かけてきて良かった。2本で帰らずに良かった。たった5分であったが、それは問題ではない。相棒も満足している様子、また誘っても来てくれるだろう。今日はこれまでだが計画の乙妻山の北東斜面は標高差900mと云う、そんなの滑ったら脳みそが溶けるかも知れないが、次はこそは行きたいと思った。

あっと云う間に登り口の末端、太子さんと富山の方々に教えてもらったこのコース、充分に楽しめましたよ、と感謝する。他パーティーも入っている様子で、あちこちにトレースを見つける。林道も立派なトレールになりスキーが走るので楽、もう雪も風も無い。朝に迷った橋を過ぎてから傾斜も緩み、ストックで漕ぎながらは腕が疲れた。それでも今日は満足、やっと山スキーヤーの仲間に入れた感じが持てた。

大橋に着くと車はもう雪だるま、まもなくボーダーも到着した。乙妻・高妻・黒姫、ここにはこれから何度も来るだろうと思い、除雪を続けた。

終わり