1. 山域・メンバー
山域・山名 | 川内 |
ルート | 早出川ダム~中杉川(ユウ沢)遡行~チャレンジランド杉川下山 |
地図 | 高石・室谷(1/25000) |
山行内容 | 沢登り |
メンバー | (L)都丸、小畑(峡彩山岳会) |
2. 行動記録
記録 | 都丸 | |
日程 | 2007/9/22-23 | |
タイム | 9/22 | 早出川ダム6:40~金ヶ谷渡渉点7:50~駒の神8:10~早出川入渓点9:20~中杉川出合9:40~ホリンド沢出合12:30~BP14:00 |
9/23 | BP6:30~ユウ沢出合8:20~登山道11:55-12:55~チャレンジランド杉川17:00 |
報告
「水泳登山」で知られる中杉川を遡行した。圧倒的なゴルジュの中で泳ぎまくり、小滝の突破で頭と技術と体力を使う、水遊びとしての沢登りの面白さを凝縮した渓だった。やはり水量の多い沢、ゴルジュの沢こそ沢登りの真髄だ。もっと早く行っておけば良かったと思う一方、川内の沢の奥深さに触れて今後が楽しみになった遡行だった。
9/22 泳いではとりつきの連続、下部ゴルジュ
早出川ダムに駐車して湖岸道を歩く。金ヶ谷渡渉点からの登り返しが急登で汗だくになってしまう。駒の神で登山道と別れ、早出川へ降りる踏み跡をたどる。水のある小沢を2本渡ると、地形図上にも顕著な小ピークが右手に見えてくる。小ピークに続く小尾根を回り込むあたりで対岸に中杉川の谷筋が見えてきた。踏み跡は草に覆われて薄くなり、川へ続く緩い尾根上に踏み跡が分かれているので下降を開始する。途中で古い標識が残っていた。最後は残置ロープのある緩いスラブが川底まで続いていて歩いて降りられる。
川原に下りてようやく一息ついた。早出川は平水ながら足をとられそうな奔流で圧倒される。すぐ下流が長いトロ場(ドウゾ淵)になっていて、早速泳いで下ることになる(1)。いつかは本流を遡行してみたいものだ。
中杉川出合はすっきりとしたスラブに囲まれたV字谷で開ける(2)。しばらくは滝もなく時々腰までつかる程度の直線的な流れが続く。両岸立ってきて、トロ場の奥で沢は左に直角に曲がり滝をかけている(3)。ここが子落としの悪場と呼ばれている(凄い名前だ)。下流側右岸にロープが掛かっているがとりあえず無視してトロ場を泳ぎ滝の直下からルートを検討する。滝のすぐ右側に浅いルンゼが走っており、傾斜は急だがブッシュが続いていて高巻きに使えそうだ。今回は小畑がヘルメットを忘れてしまったので、落石の危険が少ない先頭で行ってもらう。ルンゼから這い上がりトラバースに移ると乾いた岩とブッシュのミックスとなる。足場はしっかりしているがかなりの急斜面なので危険な箇所だ。トラバースしながら下降点を探すと残置スリングが見つかり、40mロープいっぱいに近い懸垂下降で渓に戻る(4)。
緊張の30分が終わるとお楽しみのゴルジュ遊びの始まりだ。最初のナメ状の小滝(5)は取り付きがツルツルで1回ドボン。ルートを変えてフリクションを利かせてはい上がった。3m巨岩CS滝は難しそう。手前の左岸スラブ上に残置ハーケンがあり、巻くならここからだろうが気が進まない。ためしに釜を泳いで左壁を探ってみると小さな窪みが2つ見つかった。泳ぎながら下の窪みにアングルを打ち込んでヌンチャクを掛け、上の窪みにフックハンマーを引っ掛けて体を持ち上げる。そのままハンマーを足場にしてクリアした。
手間取ったのはこの辺までで、その後は小滝があれば泳いでとりつき、トロ場があればやっぱり泳いで抜けるの繰り返しだった。下部ゴルジュの滝は全て登れてそれほど困難な場所はない。2人ともウェットスーツとPFDを装備していたので頻繁な泳ぎでも寒さは感じず、快適に思うまま遊べた。午前中は晴天で、ゴルジュの切れ目から差し込んだ日差しが美しい渓相を演出していた。
と、小畑が足元を指して叫ぶ。見るとイワナが岩棚に跳ね上がって暴れ回っている。反射的に手が伸び、数瞬の格闘の後に押さえ込みに成功した(9)。尺物である。水中で佇んでいたイワナが人の足音に驚いて逃れようと水中を突進したところ、運悪く岩棚に上がってしまったというわけだ。私たちには思わぬ収穫だった。
その後もゴルジュ内の泳ぎと小滝突破を繰り返していく。川幅はますます狭まり、最狭部では両手を伸ばすと届いてしまう(15)。両岸は絶壁が20~30mの高さまでせり上がっていて見上げる青空は細長い。圧迫感があるはずの光景なのに不思議と心地良かった。
上部ゴルジュを抜けるころ雨が降り出してきた。予報では夜半から降雨の可能性があるとのことだったが少々早い。14:00頃、左岸から小沢が流入する地点で右岸に手頃な台地があり、様子見のため停滞する。雨は次第に強くなり川は笹濁りから明らかに増水してきて遡行不能になった。時間的には少し早いがテント場適地でもあるのでビバークを決めた。よほどの大増水でなければ大丈夫だろう。背後は緩い斜面なので万一の時は逃げ込める。ツェルトの下でしばらく待っていると、夕方になる頃には雨も上がった。濡れた枝でなんとか火を起こし、いつものコースに入れた。
23日 泳ぎ、登攀をこなして稜線へ
朝からポツポツと雨が落ちる今一つの天気。水位は平水に戻っているので通常通り出発した。増水の心配がないではないが、エスケープルートの目安となる十字峡まで行ければとりあえずは安心だ。
上部ゴルジュは相変わらずの泳ぎの連続で朝から楽しませてくれる。下部ゴルジュほどの威圧感はなく、登れない滝が2つあったが巻きのルートも見出せた。ゴルジュが終わると次第に谷は開けて穏やかなゴーロ区間になった(22)。途中広い川原があり大人数でも泊まれそうだった。
上部二俣で右のユウ沢に入とここからぐんぐん高度を上げていく。2段8mの滝を快適に登ると3段20m滝(23)。1段目は左壁沿いに釜を泳ぎ、右壁に手をついての突っ張りではい上がる(24)。ここはちょっと難しいところ。2段目は左岸のバンドをトラバースして落ち口へ、3段目は釜の縁を伝って(25)右岸のリッジを登って終了。10mのスダレ状の滝は左岸の巻き、少し行くと両岸立ってきてトイ状の10m滝が掛かる(26)。巻くのも手間がかかりそうなので、ロープを出して水流の中をフリクションとステミングを交えて直登する。支点が取れないまま仕方なくロープをぶら下げたまま落ち口へ登りきった。終わってみれば今回最も緊張した場面だった。フェルト底では厳しいらしく小畑は思い切りシャワークライムになっていた。
源頭近い雰囲気になり、二俣を右に入る。まだ支沢のような気もしたが、登山道に近いルートに間違えるなら苦労は少ない。急登の枯れ沢をしばらく登り、源頭から5分のヤブ漕ぎで登山道に出た。銀次郎山の隣のピークに近い場所に出たことから、やはり一本手前の支沢を詰めていたことになる。
稜線上の登山道はしっかりしているが、木六山を過ぎる辺りから細いへつり道になって草が覆いかぶさり歩きにくい。4時間かかってチャレンジランド杉川に下山した。靴を脱ぐと片足あたり15匹以上のヒルが張り付いていた。アプローチや沢中ではヒルは見なかったのに。何が違うのだろうか。