水無川オツルミズ沢(越後駒ヶ岳)[沢登り]

1. 山域・メンバー

山域 越後駒ヶ岳
ルート 水無川オツルミズ沢
内容 沢登り
メンバー L:都丸、楡井(峡彩山岳会)
ルート オツルミズ沢遡行~駒の小屋~グシガハナ経由極楽尾根下山

2. 行動記録

日時 2005/9/24-25(前夜泊)
タイム 9/24 オツルミズ沢出合6:30~カグラ滝上8:00~サナギ滝下11:00~サナギ滝上13:30~大滝中段テラスBP16:40
9/25 BP出発6:30~大滝上8:15~フキギ西の逆S字状区間(1550m付近)11:30~駒の小屋13:45-14:30~林道18:00~駐車場19:00

報告(都丸)

沢を始めて5年目、目標の一つと見定めていた水無川オツルミズ沢を遡行する機会を得た。天候は良いとは言い難く、終日霧雨によって視界を閉ざされてついに太陽を見ることはなかった。

23日の夜は炊事場手前の台地にある広い駐車場でテントを張った。名古屋や京都など遠方からはるばるやってきたクルマが居並ぶ。夜半から霧雨が降り続いていた。

霧雨に煙る谷

曇天のもと、林道をとぼとぼ歩く。気分は少し重い。オツルミズ沢出合で気合を入れ直す。盆休みに来た時と比べるとやはり水量は少ない。当時はカグラ滝の落ち口からヒョングリ状に水流が噴き出していて圧倒されたものだった。今日の水量なら問題はない。

出合直後の10m滝は水流の左を登る。岩がぬるぬるして滑りやすいのが怖い。こんなに滑る岩は最初だけだそうだ。釜のある小滝が現れる。いきなり水につかるのは嫌なので右岸のブッシュから高巻く。バンド状の踏み跡をたどって上の10m滝も一緒に巻く。残置スリングを見つけて懸垂で降りる。カグラ滝はすぐそこだ。


カグラ滝

傾斜がきつくなってきた

連瀑へ

カグラ滝(80m)は落ち口から扇状に広がるスラブが美しい。上部が霧でうっすら隠れていて幻想的にも見える。下段は傾斜がゆるいので左から右へと水流をまたいで歩く。ブッシュのある中段で確保支点をとる。楡井トップでまっすぐ上がってブッシュに入り込んでピッチを切る。2ピッチ目を都丸が少し登って落ち口までトラバース。下から見上げると威圧されるがそれほど難しい滝ではなかった。

小滝をいくつか越えるとわずかな河原。行く手から冷気がただよう。巨大な雪の壁が前方にでんと構えている。ただいま崩壊中といった風情で、上も下も通る気にはなれない。楡井会長は少々弱気になっているようだが、こんな序盤で引き返されては困る。率先して泥交じりの左壁を登る。雪渓の上部に降りられそうなのでクライムダウン。6m滝の左壁をフリクションを効かせて登り、連瀑帯に突入する。15m滝は左岸の岩峰を登ってブッシュ帯に突入、上の20m滝と一緒に高巻いて懸垂で降りる(残置シュリンゲあり)。その後の滝群は大体登れる。釜は深く底が見えない。豪快に流れ落ちる40m滝は右岸のブッシュに入って高巻く。渓に降りると、正面には大きくえぐれた壁がぐるりと囲む。空を見上げると、モヤにかすむ遥か天空より落つる水。


右岸スラブ上から見るサナギ滝
 5段200mのサナギ滝の威容にしばし立ちすくむ。下段は登れないので、トポ通りに右岸のスラブを登ってトラバース気味に中段のテラスへ向かう。滝下まで見下ろせるので相当な高度感だ。テラスに着いてルートを検討する。定石通りならこのまま左壁。だが水流右側の凹角も登れそうだ。都丸の希望で右にルートをとる。1ピッチ目(都丸リード):飛沫を浴びてルンゼにとりつく。クラックにヘキセントリックがうまく効いてくれた。落ち口までダイレクトには登れず、手前のかぶった岩を腕力で乗り越えた。一旦ロープを回収して少し上がり、そのまま右壁の凹角を登る。2ピッチ目(都丸リード):1ピッチ目同様にヘキセントリックとハーケンとで支点をとる。下から見た以上に傾斜がきつい。途中で小さなハングを乗り越えるムーブがあり、厳しい登攀になった。3ピッチ目(楡井リード):水流を渡って左壁のクラック沿いに登る。空身でとりついて荷上げする。垂直でスタンスに乏しいが、ピンはいくつも残っている。上部でクラックから左側の壁に重心を移して越えると落ち口のテラスに出た。

サナギ滝の上に釜のある3m滝。水は冷たいが、草付きを巻くより泳いだ方が早くて安全だ。ゴルジュの中に釜と、その奥にやはり釜のある10mネジレ滝がかかる。ゴルジュの中から右岸のスラブにとりついて登る。上の10m滝もまとめて巻いて、草につかまってクライムダウン。釜をへつりながら進んでいくと、どう見ても泳ぐしかなさそうな釜のある3m滝。先ほどの泳ぎの後はブルブル震えながら遡行しているような状態だったので、これ以上水に入るのは遠慮したい。右岸の草付きからブッシュに逃げ込むと、3m滝の上には直登できそうもない6m直瀑が見えた。さらに右岸から支沢が滝をかけて合わさる。残置シュリンゲを見つけたので一旦支沢に降り、再び尾根にとりついて6m直瀑の上に降りる。


泊まり場
 80m大滝の手前は崩れた雪塊が渓を覆っている。大滝の全容が見えるあたりまで雪の上を慎重に進む。見上げると80mという数字以上に高く長く見えた。下部は傾斜がきつくて登れそうもない。少し手前から右岸のスラブを登ってブッシュに入る(ロープ使用、2ピッチ)。ガレたルンゼに懸垂で降り、水流に向かって岩のバンドを伝う。スラブを少し登ると中段のテラスに出た。多少の傾斜はあるが窪んだ形になっており、2人が横になるには十分の広さだ。水流から一段上がっているので増水の心配もないだろう。ここを今夜の泊まり場とした。念のためロープをつないで寝る。滝の真横なので水音がやかましい。常備している耳栓が役に立った。

草付きスラブの中の滝また滝


大滝の落ち口付近から


リッジを落ち口まで下る。


連続したスラブ滝。登れる。

テラスの水たまりを泳ぐかわいいハコネサンショウウオに別れを告げ、朝一番の登攀に向かう。1ピッチ目(都丸リード):左壁のスラブを登り、傾斜が緩くなるところで水流に向かってトラバースする。ルート取りに少し迷う。2ピッチ目(楡井リード):水流の左側を登る。スタンスが外傾しており一歩が大きい。いやらしいピッチだ。水流のすぐ左でハーケンを叩き込んでピッチを切る。3ピッチ目(都丸リード):そのまま水流の左側を登って落ち口のブッシュにたどりつく。一応核心を抜けたのだろうか、ここから先はやや開放的な景観になったようだ。

大滝の上もまだまだスケールの大きな滝が続く。20m滝は右岸を巻き、落ち口へと続く草付きリッジをクライムダウン。ナメ状の10m滝、15m滝は快適に登れる。25m滝は登れず右岸を巻く。楡井さんの絶妙なルート取りであっさり落ち口に出た。小滝の上の15m滝は左右どちらも登れそうだが難しそうだ。楡井リードで左壁を登る。途中でロープが岩肌にこすれて流れにくくなり苦労する。強引にロープを引っ張りつつ、逆層の岩の隙間に生える草をホールドにしてトラバース気味に抜けた。

10m滝を越えると再び雪渓が出てくる。安定しているので上をスタスタと歩く。20m滝の落ち口で雪渓が切れており、右岸の草付きから簡単に乗り越える。滝上も雪渓が続く。谷が右に直角に曲がる地点の25m滝の手前で雪渓が切れている。左岸の草付きから高巻く。取り付きは急傾斜で悪い。やせ尾根に乗るとすぐ目の前に本流が見えた。この区間は沢が逆S字状に屈曲している。谷のスケールは明らかに小さくなった。4~10m規模の小滝を次々と越えていく。ほとんど直登できるし、巻きも厳しくはない。それでも部分部分で微妙な動きを要する場面があって気は抜けない。

次第に両岸の傾斜は緩くなり、明るい草付きになってきた。穏やかな源頭部の景観だ。相変わらず霧雨が降り続いていて見通しが利かないのが残念だ。ナメ滝・小滝を飽きるほど登ってうんざりしかけた頃に、駒の小屋から降りる水場に出て遡行終了。小屋に入り、前日に尾根隊がデポしておいてくれたビールとつまみをいただいて疲れを癒す。

標高差1500m弱の長く辛い極楽尾根を下って帰る。真っ暗になった林道でヘッドライトをつけてクルマに戻った。

感 想

ねんがんのオツルミズ沢を登ったぞ! 天気の悪さにはあえて目をつぶろう。想像以上にスケールのでかい爽快な沢であり、充実した登攀を楽しんだ。ひたすらに滝を登り続けた一日半はあっと言う間に過ぎ去った。今は満足感でいっぱいだ。記録は取ってはいたが、滝の数が多すぎてとても全部は把握していない。悪天のためにデジカメを出す機会は少なかった。滝の写真を見たい方は他の記録をあたってほしい。

さすがに人気のある沢らしく、要所にはハーケンやシュリンゲが残されている。ヤブの中でそろそろ沢床に降りたいなと思う頃に残置シュリンゲを見つけると、思わず苦笑しつつもほっとした気分になるものだ。一方で、資料にないルートをとろうとすると人工物は見当たらず、知恵をしぼってルートを吟味して登らなければならない。これはそのまま沢登りの面白さを構成する要素だろう。ハーケン2枚を回収できずに残してきてしまったことは、後の人の楽しみを減らしてしまったようで少々心残りではある。

越後三山周辺の沢は険谷ぞろいで登攀的要素が強く面白い。次はどこへ行こうか。