北アルプス・剣岳[春山合宿]

春山合宿の報告

5月連休に剣岳をメインに春山合宿を行いました。好天にも恵まれて新人2名を含む全員が登頂を果たし、前夜祭・尾根・雪稜・スキーと北アルプスを満喫して来ました。

昨春に鹿島槍から剣岳を見て、「行ってみてぇなぁ~。」と思ったところから始まった今春の合宿、無事に終了する事が出来ました。雪のある剣岳に行けた事を喜び、反省点は改める。次回もより良い山行が出来る様に、と自問する次第です。

《合宿概要》

◎ 川入口~松ノ木尾根~飯豊本山~川入口

(奈良山岳会5名、峡彩3名)

4/29 川入~松ノ木尾根~三国小屋

4/30 三国小屋~本山~切合せ小屋 (峡彩2名帰る)

5/1 切合せ小屋~松ノ木尾根~川入(村杉荘)

◎ 室堂~剣沢(ベース)~剣岳~剣沢~室堂(2ルート)

5/2 新潟~富山(太子宅・前夜祭)

5/3 太子宅~立山~室堂~剣沢(ベース)

5/4・剣沢~源次郎尾根(雪稜)~剣岳~平蔵谷~剣沢

(大江(L)、楡井、太子)

・剣沢~別山尾根~剣岳~平蔵谷~剣沢

(成海(L)、伊実、伊静、高清、戸貝、野村、渡辺)

5/5 剣沢(ベース)~室堂~立山~上市(風呂)~新潟

 

春山合宿「剣岳」山行報告

岳人の憧れである岩と雪の殿堂の剣岳に運良く登頂できました。いままでとは違う山行を味わうことができ大きな勲章 (自信) を貰った気分です。剣岳バンザイ。春山合宿バンザイ。

・コース…室堂~雷鳥平~剣御前~剣沢~別山尾根・源次郎尾根~平蔵谷~剣沢 (往路戻り)

・日程…5月3日~5日

・ メンバー…

源次郎尾根:L大江、楡井、太子

別山尾根: L成海、高橋清、戸貝、渡辺国、伊藤(M)、野村、伊藤(S)

 

行動記録

2日

夜に富山市に住む太子さんのアパートに泊めさせて貰い前夜祭をする。

3日

太子さんの案内で立山駅に向かう。朝早いのに予想以上の賑わいで圧倒されてしまう。長い行列を並び、やっと室堂直通のバスに乗り込めばただの観光客である。室堂バスターミナルもすごい賑わいで迷子になりそう。

快晴無風の雪原をスキー組、つぼ足組に分かれて雷鳥平に向かう。そこにはテント村があり春スキーヤーで賑わっている。雷鳥沢の登りはアイゼンを着けたりスキーを担いだりしてやっと登りきる。

剣御前からは剣沢が広がりその奥に剣岳が黒々と全容を現す。明日昇るルートを観察する。「あれが平蔵谷、源次郎、八ツ峰、別山尾根の稜線はどこを歩くのだろう」ここから、緩やかな剣沢を軽やかに滑り降りようと滑り出すのだがザックが重くて何度も転んでしまう。

剣沢キャンプ場には15張ほどのテント村があり我々も2張のジャンボを離れた雪面に設営する。戸貝さんから受付に行って貰いここのルールを聞く。「テント料金は取られないけど用足しは絶対トイレでするように」と言われる。設営も終わり外にテーブルを造り乾杯した後、明日のアタックに向けて野村、伊藤(S)さんを安全に登頂させるため大江さんを講師に雪上訓練をする。滑落停止、ダイヤモンド歩行、スピッツェを使った急斜面の登下降、スタンディングビレイなど。野村さんは滑落停止訓練ができて安心できたとの事。

明日昇る尾根隊のルートを小屋番の情報を参考にして決定する。計画を変更して登りは別山尾根、下りは平蔵谷とする。このルートが標高差も少なく安全であるとの事。岩尾根隊は予定通り源次郎尾根を登り下りは平蔵谷とする。隣のテントには新潟山岳会の西川さん他の混成パーティがおり八ツ峰を登るとの事。陽が落ちるとさすがに寒くて外にはいられない。テントに入り明日のパーティ行動の確認をして就寝。

4日

源次郎パーティは5時前、別山尾根パーティは6時前に出発。新人の2人を伊藤、渡辺くんにサポートしてもらい安全を期す。先行するパーティがおりその後を登る。
昨日、剣沢から見た急な雪面は雪のコンデションも良くステップが多くありさほど心配ない。途中の岩稜はアイゼンをきしませて夏道の岩場を通過。前剣からの下りは後向きで雪面を下降する。避難小屋跡のある平蔵のコルから始まる岩峰には先行パーティがおり手間どっている。ここは新人達にはアイゼンを外してもらう。取付いてみれば鎖と大きな釘が打ち込んであり足場に不自由しない。ここを通過すれば山頂まで雪がつながっている。途中、早月尾根の分岐からルートの様子を垣間見る。傾斜も緩くなり小さな祠を過ぎればそこが山頂で10名ほど先着していた。主稜、八ツ峰、源次郎のつながりがくっきりと見える。源次郎パーティは第二峰で懸垂待ちをしているとの事。穂先だけの槍ヶ岳を見ながらビールで乾杯。
山頂からの下りは眼下が広がり高度感があり緊張する。平蔵のコル手前の岩場は下り専用のルートを鎖を頼りにアイゼンを着けたまま下る。最後には長い梯子がかけてありアイゼンの爪を引っ掛けて下る。避難小屋跡から広い平蔵谷を一気に下降する。昼近くになり雪も緩みグリセードで降りられる程だ。途中、剣岳山頂から滑り降りるスキーヤーを感心して見ながら剣沢出会まで汗を流す。ここから1時間少しの登返しで泊場だが息が切れる。風が冷たく我々がテントで乾杯をしてくつろいでいると源次郎パーティの大江さんが覗き込んできた。また全員が揃ったところで登頂を祝ってまた乾杯 (剣沢小屋ビール500ml 700円、酒1合400円)。休憩をした後、高橋、太子、渡辺、大江さんがまた登り返し剣沢の斜面を滑って過ごす。その夜は遅くまで歌ったりして楽しく過ごす。

5日

あとは来た道を帰るだけだが室堂が込み合う前に到着する為、早く出発する。剣御前で剣とサヨナラし、いよいよ雷鳥沢の滑降だ。気にしていた通り雪が硬く雪面が荒れていて滑り降りるのに難儀をする。観光客で賑わうミクリが池を横切り室堂に到着。バス乗り場はさほど込み合ってはおらずすぐに乗ることができた。帰りはスキー代、荷物代の600円を請求される。雪の大谷を通り美女平でケーブルカーに乗り換え立山駅に到着。上市町の保養施設で風呂に入り長い帰路に着く。車中から見える剣に別れを告げ合宿を終える。今回の合宿に参加してほんとに良かった。

 

反省点

1、共同食料が軽量化にこだわり腹持ちが悪く燃料不足だった。 2、テントの設営をしっかりと張っておく事。(本体とフライのセットが間違っていた為、風に対しての強度がなくなる) 3、今後の課題になるが2足の靴を使わないよう研究・実践してください。(プラブーツで滑れるようになるか、兼用靴でアイゼン登降できるように)

良かった事

1.ジャンボに5人ずつ入りゆったり過ごせたのは良かった。(少し重くなるが)

2.喫煙テント、禁煙テントに分かれて入れたのはお互いに良かった。

まとめ

新人の2人を含めた10名パーティで計画通り登頂できた事は直前の西黒尾根やアタック前日の雪上訓練、会員達のサポートなどがあり成しえたものだが本人たちの情熱が剣の山頂まで登らせたものだと思います。晴天に恵まれ雪の状態もよく先行者のトレースがあり無事に登ることができました。また今回の山行を生かしてさらなる高みを目指してもらいたいと思います。それと会員の太子さんのおかげで無駄なく行動でき助かりました。感謝。

今後の課題

入山前、例会でいろいろと出た話だが新人たちの参加については基本的に山行するメンバーとリーダーに任せてもらいたいと思います。忠告は結構だがあまりにも過ぎてしまう事は、会の活性化を阻害してしまいマイナスです。本人たちは一生懸命やっているのだから前向きに考えて欲しいと思います。実際に体力もあり技術も覚え、あとは経験を積むだけなのだから。
(CL・成海)

《春山合宿に参加して》

合宿、それも雪のある春山でのテント泊まりと私にはすべて初めてのことで、行く前からとても楽しみでした。天候に恵まれ山々の眺めは素晴しく、太子さん宅、テントの中では終始笑いがたえず楽しく過ごしました。幕営地までの歩きはプラブーツにアイゼン、2泊分の装備で荷は重く、高度3000m級と高いためか直ぐに息は切れ足がぜんぜん前に出ず、しまいに頭も痛くなりほんとに苦しかったです。剣岳山頂へのアタックでは急勾配な雪面でのトラバースと登り下り、岩場では鎖にしがみつきながら何とかやっと通過、最後まで気を抜く事は出来ませんでした。山頂からの大パノラマは最高に素晴しかったです。合宿での4日間、大好きな先輩方とずっと過ごせたこと、そして剣岳山頂までも連れて行っていただいたこと、ほんとうに嬉しかったです。リーダーの成海さん、現地の下見や案内、宿まで提供して下さった太子さん、サポートしてくださった伊藤さん。そして今回の合宿と今まで数々の山行に連れて行っていただきいつも親身に御指導して下さる先輩方のおかげなのだと思います。ほんとうにありがとうございました。
(伊藤 静)

《2005年春合宿 剣岳 を終えて》

昨年の鹿島槍から思いを募らせ、情報収集や冬トレ、特に野村、伊藤(静)の新人2名が、谷川岳などでのトレーニングに積極的に参加して、十分な準備をしてこの春合宿に望み、その上で剣岳の山頂に立った意味は大きい。
これは“運”だけではない。
天候・雪の状態と、好条件が重なったことは事実で、おごる気持ちは無いが“合宿”という総合力を試される場での結果であるが故に、峡彩にとっては大きな一歩だったと思う。これからも積極的に外に出て行けば、会員の拡大にもつながり、会の活性化にもなると確信する。
(大江)

報告 大江

1.山域 メンバー

山域・山名 剣岳
ルート  源治郎尾根
山行種別  春合宿
山行内容  ミックスクライミング
メンバー  L:大江、楡井、太子

2.行動記録

日程 2005年 5月 3日~ 2005年 5月 5日
5月3日5日 A隊B隊統一行動 立山駅経由~室堂ターミナル~剣沢ベース往復
5月4日 ベース4:30~源治郎尾根ルンゼ末端4:55~小岩峰6:35~I峰ピーク8:10~II峰ピーク
8:50~懸垂終点10:20~剣岳山頂11:30-12:00~平蔵谷下降~剣沢出合12:45~ベース
14:05

3.報 告


八ッ峰を背景に

連休中頃に降った雪は既に固く締まって、何ら問題ない。むしろ、前日からの好天で朝から腐れ気味である。

ルンゼの末端は直ぐにわかった。他のガイドパーティーが、数パーティー、打ち合わせやら、既に登り始めている。
ルンゼは結構な斜度だが、固く締まっていて雪崩の心配もない。
最初の凹状の岩場は、そのまま雪壁を左上する。2,450m付近で雪壁は終了して、顕著な藪混じりの岩稜帯に出る。I峰手前のテラスで小休止する。右隣の八ッ峰のスカイラインに数パーティーの人影が伺える。振り返ると、昨年、一昨年と登った鹿島槍、その右側には針木岳、左手には唐松から白馬まで望める。
I峰のピークまでには、難なく至った。I峰からII峰までのコルの前後は、細い雪のナイフリッジを下り、登り返すが、前者のステップが無かったら、ロープが必要になろう。コルに至ると左下からS字雪渓を登ってきた3人パーティーが、直下でルート工作をしていた。「随分マニアックなところ、やってますねぇ」と、声を掛けたら「あははは」だとサ。
II峰の手前、小ピークに着くと、II峰は先行の数パーティーが懸垂下降で順番待ちになっている。我々の後ろにも数パーティーが上がってきている。II峰の懸垂下降点は、支点が2つある。我々がII峰のコルに降り立ったのは、待ち始めて1時間半後だった。
ここから15分程度の雪壁を登れば山頂である。
山頂に至ると、裏銀座の他にさらに、立山方向右手に薬師岳、笠ヶ岳。雄山のほぼ後ろに槍、穂高連峰が望める。山頂はさすがに寒い。風を避けて祠の南側、雪の壁に身を潜めて3人で350の缶ビールで乾杯し、下山にかかる。

下山は夏道を前剣側に少し下ると、平蔵谷の雪渓にとびおり、転がるように剣沢まで駆け下りた。

4.感 想

一昨年の春、本間文と鹿島槍山頂から「次は剣だね」と言いながら、結局昨年は準備不足で、鹿島槍に変更。再び鹿島槍からほぼ今回のメンバーらと、「来年は剣だね」と、誓いも新たに。3年越しで春剣に立つことが出来て良かった。近くて遠い剣だったが、来てみれば「また来たいね」と、なる。
とにかく条件が良かった。天気、雪、チーフリーダー、メンバー。また、折良く、太子さんが富山に転勤になって、下見をしてくれていた。歯車がうまく回っているときはこんなものだろう。食わず嫌いが一番行けない。さて、来春は槍か穂高か。