報告日2004年 5月12日(水)
報告者 大江
1.山域 メンバー
山域・山名 北アルプス 鹿島槍ヶ岳(2889.1m)
ルート 東尾根
山行種別 春合宿
山行内容 バリエーション ミックス
メンバー L大江、戸貝、楡井
2.行動記録
日程 2004年 5月 1日~ 2004年 5月 3日
5/1 大谷原pm8:40(泊まり)
5/2 大谷原am5:20~東尾根取り付き(砂防堰堤脇)am5:40~檜林の稜線am6:05~一ノ沢ノ頭am8:45~二ノ沢ノ頭am9:55~第1岩峰am11:40-12:45~B隊(爺ヶ岳)と交信pm1:00~第2岩峰pm1:45-3:20~荒沢ノ頭pm3:50~北峰直下からB隊と交信pm4:00~北峰pm4:45~南峰pm5:45~南峰直下でキャンプpm6:00
5/3B隊と交信am7:15~B隊と合流am7:35~キャンプ地出発am8:10~冷池山荘am11:20~赤岩尾根から西沢雪渓~西俣出合am12:45~大谷原pm1:35
※時間から時間の中には休憩時間を含む。
3.報 告
岩峰登攀ルート
1日目 A隊の3名は休日だったので、B隊より早く新潟を発つ。
大谷原に着くと既に4~5張りのテントが張ってある。車は15~20台程度か。直ぐに我々もテントを張り、明日に備えてささやかな前夜祭をして、シュラフに潜る。
2日目 食事は各自が軽量化に努力する様、あえて各自持ちにした。それぞれ早い朝食を摂り、不要なものを車の中に放り込み、初日のキャンプ地、大谷原を出発した。
大冷沢の左岸林道を20分程歩くと、砂防堰堤の右手に赤布が下げてある。ここが東尾根の取り付きである。雑木林の中、最初の数十メートルは急登だが、間もなく傾斜は緩くなる。
1280m付近の稜線にでると、天然檜林となる。稜線からは雪の上を歩ける。
所々雪が消えて藪が覗いているが、石楠花が多く見られ、雪がなかったら「参りました」と、白旗をあげなければならないことだろう。
1650m付近で檜は終わり、山毛欅の大木の疎林になる。まるで会津の山の様な雰囲気である。
1730m付近の山毛欅林の中でクランポンを着ける。
7:45、1800m付近で霧が晴れてきて正面に荒沢奥壁、南峰、左手に昨年ブンちゃんとアタックしたダイレクト尾根、鎌尾根さらに爺ヶ岳が見えてきた。上空は雲一つない快晴で気温も高い。贅沢かもしれないが、雪稜登攀には最悪の雪質であろう。案の定、右と言わず、左と言わず、雪崩やら、崩落やら雷の様な音が絶えなかった。
1880m付近から尾根は顕著な痩せ尾根に変わってくる。
一ノ沢ノ頭ではキャンプの跡は見えなかったが、キャンプを設営するにはもってこいの地形である。ここで我々3人は目前に控える岩峰に備え、ハーネスを着ける。
2177m二ノ沢ノ頭に着くと、ここもまたキャンプを張るには打ってつけの地形である。最近のものと思われるテントの跡、数ヶ所が伺える。しかし、オンライン上にキジ跡が著しく、注意して歩かないと”地雷”を踏みそうな程である。
ここから正面の岩峰が手に取る様に伺える。3人、地形図を覗きながら進路を見定める。
小ピークを2つ、トラバース気味にくだり、荒沢の頭に突き上げるルンゼに取り付く。ここでコンテニュアンスを結ぶ。
前者の足跡は直登している様だが我々は雪渓の分岐を右に登り、最初の藪岩を巻く。するとやがて第1岩峰に突き当たる。
第1岩峰は、正面の方が面白そうだったが相談の上、右手のチムニーにルートを選択する。中間のブッシュでピッチを切り2Pでクリアー。ここは岩がもろく浮き石も多いので、落石をしないよう注意が必要。
さらにコンテニュアンスのまま、第2岩峰を目差し、急な雪壁をトラバース気味に登る。
後で第2岩峰の上からこのトラバース路を振り返ったら、斜度60度はあった様に見えた。ここは稜線上をクリアーしても良かった様に思えた。
第2岩峰は大きなブロック岩の積み重ねで構成されている。先ず、右手に荒沢本谷ルンゼを見ながら中間のダケカンバを目差し直上。2P目は左上のチムニーからチョックストンを越える。
このチョックストンを越える時、楡井、戸貝は空身で登り、後からザックを回収した。第2岩峰は距離的には1Pだが、岩質とランニングの角度から、ロープが滑りにくくなるので、ピッチを切った方が正解と思う。
第2岩峰をクリアーすると、荒沢の頭、北峰は間もない。
北峰でロープを解除し、残すはパートナーの行けるところまで行って、2日目のキャンプとする。
この日、我がA隊は南峰の先、少し下ったところで、キャンプを張ることにした。
3日目 強い風で目が覚める。外は霧で視界は400から500m程度か。
我々は、冷池まで来ているB隊が、南峰を目差してを来るのを待つ。
合流後、赤岩尾根から西沢雪渓を滑る様に下山する。西沢の雪渓は十分で”尻セード”で快適に下る。おかげで、稜線の赤岩尾根岐路から西沢出合まで、僅か1時間で下ってしまった。
西沢出合付近の残雪は、昨年から見ると遙かに少なかった。
4.感 想
当初、年度計画では“剱”の予定であったが、情報不足、準備不足で、鹿島槍での合宿となったが、鹿島槍をけっして甘く見たわけではなく「富山県条例」による、計画書の提出期限が最大の計画変更の要因だった。
鹿島槍にもカクネ里から北壁、荒沢から奥壁など相手にとって十分すぎるグレードが控えているのは承知している。しかし、それらであっても今の我々のレベルでパーティーを組んでアタックできる相手とは思わない。とはいえ、冷池付近から霧が晴れて、剱がその荒々しい全容を見せてくれたが、けして手の届かない相手とは思わない。無論バリエーションの話しである。むしろ意欲をかき立て、今後の活動の励みに思ったのは私だけではないだろう。
PS 各自、軽量化に努力してきたことは合宿成功の要因であり、評価できると思う。今後も力を落とさないためにも、重量化と軽量化をうまく使いこなして行ければよいと思う。