北アルプス/白馬主稜 [雪稜]

1. 山域・メンバー

山域・山名 北アルプス/白馬岳
山行内容 雪稜
メンバー (L)楡井、大江、戸貝、中山(峡彩山岳会)

2. 行動記録

記録 中山
日程 2008/4/28
タイム 4/28 二股3:15―4:05猿倉4:30―取り付き6:00―最後の雪壁前11:40―14:15白馬岳14:20―14:30白馬山荘15:00―猿倉16:30

報告

初めて登った白馬岳の山頂からの眺めはこの日の充実ぶりも手伝い、最高のものだった。
入門とはいえ、アルパインクライミング。そして日本のクラシックルートのひとつ。
そこを辿れたことは、山を趣味とした一度きりの人生に大いなる糧をもたらす事になるだろう。
夜中、一人でゲートの開かない車道を行く。自転車を漕ぐ腿はすでにパンパンだ。
暗闇の中、斜度の解らぬ道を荒い息とともに登っていった。
遠くなり近くなり、鵺の怪しい泣き声が耳障りだが、怖さを荒い呼吸で打ち消した。
歩くよりも遅いのではと思いながら漕ぐペダルは重い。
約束の時間は刻一刻迫るが、あとどれくらい漕ぎ続ければいいのか見当も付かない。
そのうちはらはらと雪の花が舞ってきた。下では吉野が舞い終えたというのに・・・・

ふいに前方より明かりが漏れた。声も聞こえる。キャラからいって楡井さんだと思った。
猿倉山荘の駐車場でメンバーと挨拶。見上げる白馬岳はガスで見えない。
歩き出すと雪面は締まり、はなからアイゼンがいりそうだった。
白馬尻まで来ると主稜を行くパーティが一組二組・・・・
末端から取り付いた。途中よりトレースにぶつかるが、大江さんは右のだけかんば付近のほうが良さそうだとルートをそちらにとる。楡井さん、戸貝さんはトレース沿いに登ってくるようだ。
先行する大江さんは早い。苦しい登りだが何とか着いていく。
いったん斜度が緩んだところで小休止。楡井さんと戸貝さんもすぐに合流。
大江さんはすぐに先行し始める。そうしていよいよ尾根が狭まり、稜と呼べるようになってきた。
ふと振り返ると空は灰色から青くなりかけ、今日の好天を期待させた。

そこからは累々と続く尾根を辿っていく。時折、雪庇上を歩いているところもあり、気持ちが悪い。
視界が利き、今日の雪質、今の時間だからこそ通過できる。
写真を取り捲りながら歩く。前を行く大江さんが小さくなりまた追いかける。
そして後から来る楡井さん、戸貝さんをまた撮る。そんな繰り返しをしていると、腿に違和感が出始めた。
どうやら、また調子が悪い時の痙攣が出そうな兆候だ。それでもじんわりと歩くがついに攣ってしまった。
こうなると痛い。一瞬弱気になるが、すぐに打ち消す。大江さん、戸貝さんから塩をいただき、なめると
痛みは和らいだ。しかしそれもしばらくすると元の木阿弥。最早だましながら行くしかない。
見あげると、先行パーティがことの外近づいている。どうやらロープを出し登っている。
やがて追いつくが我々はノーロープで行く。しかし順番待ちなので暫しの待機。
少しの岩を攀じ、雪壁を行く。一旦緩み、次の雪壁も先行者はロープを出している。
それを横目にすぐ隣りを大江さんがフリーで行く。三重から来たという単独のおじちゃんも続いている。
さすがに単独で来るだけの事はあるものだと思った。
そしていよいよ最後の雪壁の登りに到着すると。1,2,3・・今日の合計6パーティが出揃った。
我々の順番は最後。別ルートを工作するかという話も出たが、とりあえず見守る事に。
しかし、待てども待てども先行は捗らない。なんと我らの番が来るまでに2時間以上を要した。
下の待ちからあわせると約3時間の待ちだった。見上げる雪壁。ジェット気流とともに表面を雪崩がベールの如く滑り落ちてくる。蒼い天から流れるように降ってくる白はまさにブライダルベールのようだった・・・
4人をワンプッシュで登ろうと話し、やり方を相談。僅か20分ほどであっけなく終わってしまった。
風が強い初めての白馬岳山頂だったが、交わした握手から伝わる想いで微風に感じる。
写真を撮り合い、山荘へ降りる。除雪している山荘の人たちの好意で玄関をお借りし、遅い昼食と乾杯。
予定外の時間が掛かったので、30分ほどで切り上げ後は大雪渓を脱兎の如く。
蒼白の斜面を爽快な風と気持ちと共に駆け下り、1時間半ほどで猿倉に到着した。
登りで苦労させられた自転車で車まで。下りはそれこそ車よりも早かった・・・・
今回、白馬岳主稜を辿ってみて、山の魅力と奥深さを再認識させられると共に、
メンバーの懐の深さをあらためて感じる事が出来また、そんなメンバーに深く感謝している。