1.山域・メンバー
山域・山名 | 北アルプス・槍ヶ岳 |
山行内容 | 冬山登山 |
メンバー |
峡彩山岳会:田中、伊藤芳、戸貝直、吉川 |
天候 |
11/21 晴れのち曇り |
2.行動記録
記録 | 吉川 |
日程 |
11/21(土)0930 新穂高 – 1100 穂高平 – 1200 白出沢出合 – 1500 槍平 |
3.報告
本格的な冬山シーズンを迎える前のトレーニングのため、小国山岳会と合同で槍ヶ岳に行ってきました。今回、峡彩からは田中さん、伊藤さん、戸貝さん、吉川の4名、小国山岳会からはリーダーを務めてくださったWさんとイレブンクライマーの大型新人・NKさん、そして戸貝さんの知人であり冬山も沢もソロで行かれているというNさんが参加され、総勢7名のパーティとなりました。
11月21日は朝9時半、新穂高より右俣林道を歩き始めました。登山口に雪はなく、天候も穏やかで、冬山&宴会装備で重い荷物を背負っていると少し汗ばむくらいでした。重荷に慣れない体をゆっくりと進め、11時穂高平、12時白出沢出合と順調に歩を進めていきます。白出沢出合をすぎると道は本格的な登山道となり、列が少し伸びてきたので、チビ沢とブドウ沢の間で休憩を取ることにしました。・・・と、休憩中、突然頭上から「メキメキ、パン、パン!」とものすごい音が。えっ、落石!?とみんな慌てて斜面上方を見るも、落石の気配はありません。はて?と戸惑う一同、鳴り続ける不気味な音。そこでようやく10メートルはあろうかという枯木が、登山道に向かってゆっくりと傾いてきていることに気づきました。傾き始めてからはもう本当に一瞬のことで、ドーン!という音を立てて大木は登山道を塞ぐように倒れ、衝撃で木っ端微塵に、辺りには巨大な破片が勢いよく散らばりました。間一髪、私たちの休憩していた場所のたった数メートル先のことでした。
先が思いやられるような出来事に戸惑いつつも、「鳥も通わぬ」不気味な滝谷を渡渉し、15時ごろ、雪のない槍平に無事到着しました。テントを設営し、明日のアタックに向けた作戦会議(宴会)でメンバーの親睦を深めつつ、少し早めに眠りにつきました。
11月22日は戸貝さん特製の中華粥を食べたのち、5時に出発。星がよく見えていましたが、その分冷え込んだためシーズン始めの身体に寒さが応えます。千丈沢分岐の手前で夜が明け、背後の笠ヶ岳が徐々に朝日に照らされていく様に力をもらいながら、飛騨沢の急登を登っていきます。標高2700mでようやくまとまった雪が現れ始め、ここでアイゼンを装着。8時半、飛騨乗越にようやく到着すると凄まじい強風とともに雲が湧き上がってきました。体ごと持って行かれそうな風に耐えながら、なんとか槍ヶ岳山荘の陰に転がり込みます。凍てつく猛烈な風に少しだけ気力が削がれますが、風が落ち着きつつあること、穂先にほとんど雪が見えないことなどのリーダー判断で、穂先へのアタックを決行しました。
穂先の状況はこの時期にしては非常によく、鎖はほとんど埋まっておらず、氷結箇所がいくつかあるのみでした。一部、アイゼンの前爪のみで岩や梯子を登っている箇所がありましたが、ここでは去年阿弥陀岳北陵やアイスクライミングに行った経験が活きました。午前10時、7名全員登頂。頂上はガスと強風でしたが、山頂標識をしっかりと握りしめて登頂を喜び合いました。
十分に注意を払いながら穂先から下山した後は、各々のペースで飛騨沢を降りました。この日の夜は強い雨の予報だったため、テントは張らずに槍平の冬季小屋に泊まりました。2階部分しかスペースがなくやや狭いものの、清潔で快適な小屋でした。皆で登頂の喜び分かち合いつつ、なんと持ってきたお酒が尽きるまで(!)長く楽しい夜を過ごしました。
11月23日、心配していた雨もそれほど強くはならず、静かなガスのなか下山を開始し、12時、無事に新穂高に戻りました。私にとっては今回が初めての槍ヶ岳でしたが、行程中は勉強になることが多く、しかも幸運なことに登頂も実現しました。同行の皆さまには感謝いたします。この経験を踏まえて、今年の冬山もいろいろなチャレンジをしてみたいと思います。