棒掛山 [雪山]


1. 山域・メンバー

山域・山名 飯豊前衛/棒掛山
ルート 水沢~荒戸沢左岸尾根~山頂(1025m)往復
山行内容 尾根・雪山(冬山教室)
メンバー L成海、戸貝、大江、伊藤(M)、内山、小畑

2. 行動記録

記録 小畑
日程 2011/02/27
タイム 2/27 水沢7:45-林道通過8:45-稜線(松花峰上部)9:30-弱層テスト10:45山頂11:10~13:10大休止、ビーコン講習-15:00下山

報告

 今年の冬山教室は6人の参加で、天候にも恵まれた。登山道のない積雪期ならではの山歩きができ、貴重な一日となった。弱層テスト、ビーコン講習を実施し、雪崩の危険回避と対処について、学習と確認ができた。

山行内容

 道とはなんだろう。狐の嫁入りで有名な津川から、日本酒の銘柄名にもなっている麒麟山を右手に見て、阿賀野川沿いを鹿瀬まで走ると、国道459号線に合流する。睦月橋、如月・弥生・卯月トンネルから皐月橋、水無月・文月・葉月・神無月・霜月・師走トンネルまで、旧暦の月名がつけられていて面白い。トンネルはすべて素掘りでぼこぼこしている。どなた様が掘られたのかは存じませぬが、「人」のなす技に感服しながら、通らせてもらうことにする。『一年』をひと廻りすると、荒戸沢が横切る。沢沿いの田んぼ道に入ったところで、車を降りる。

 成海リーダーの挨拶で、私だけが初見の山だと分かった。沢を外れて広葉樹の丘に上がる。葉が落ちているので、すっきりとした印象だ。木にはぼこぼこと何かが付いている。どなた様の仕業なのだろうか、都丸さんに見てもらうために写真を撮った。

 この丘を少し下ると、杉林になる。杉と杉とが均等の間隔で並んでいる。手入れも行き届いていて明るい。「うっとり」するとはこういうことを言うのだろう。見とれていると「誘われて、迷うから注意するように」と大江さんの声を聞く。目指す峰に作業用の「道」は通じていないということだ。

 林道を横切り、松花峰の先を目指す。こう配のある杉林は手入れがされていない。ここも植林されたには違いないが…、今昔を垣間見る。森のひと廻りは100年ときく。うす暗い中で、一抹の寂しさを覚える。うつむき加減の頭をあげると、目指す稜線と青空が出迎えてくれる。すかっとした平原が目に眩しい。ここもかつては植林されていたのだろうか。

 稜線への取り付きは急こう配。ラッセルトップは大江さん。さすが地元民、みるみる離されていくのだから、鉄人だ。

 尾根へあがると風が冷たい。着こんで、サングラスをかける。よし!ここからは、私の出番だと、先陣を切る。それもつかの間、急峻な細尾根と新雪の下のザラメ雪に足元を奪われ、思うように進まない。夏道はないという藪山だけあって、手ごわい。先ほどから、軽々と先を行くカモシカの足跡が恨めしい。この踏み跡に誘われていると、先は崖を少しトラバースしている。影になっていて雪質も分からない。ここで落ちると、どこまで行くのだろうか。見下ろすと唾をのむ。「上がった方がいいよ」と成海リーダーから声がかかるが、こちらは先ほど着こんだ上着で暑く、サングラスは曇り、ワカンは蹴りこんだためか、ずれてぶらぶらしている。万事休す。祈るような顔をしていたのだろうか?振り返ると「代ろうか」と天から声が降りてきた。結局、この細尾根は伊藤さんにやっつけてもらうこととなった。

 上着はザックに片づけ、曇ったサングラスを外し、ワカンを締め直して、うしろをついていくが、敗北感がこみ上げてくる。道なき道。カモシカと野うさぎの知る道。成海さんは「今回は雪が付いていて良かった」「藪が出ていると考えるよなぁ」とつぶやく。想像しただけで、緊張する

 右から別の尾根が入ってくるのを認めたところで、小休止。成海リーダー自ら、弱層テストのための雪柱を掘りだす。小さなスコップで、あっという間に掘りあげる。みんなで、新雪の層、ザラメの層①、②を確認する。柱をつかむ姿勢に、成海さんの「腰」を心配する。ごそっとずれる。柱を股に抱く。ザラメの層①と②が分断された。

 ピークへ向かう稜線へ90度ターンをすると、2年前の冬山合宿を思い出す。疣岩・三国の稜線、大日が雲を抱いている。昨年の春山合宿で滑った前川の谷が脳裏に浮かぶ。蒜場山が悠然と立つ。勾配は緩やかになり、気分は晴れる。ここは天空の丘に上がる道。大江さんはぐんぐん先を行く。成海さんによれば、山頂には三角点のみがあるという。日焼けした赤布が山頂へいざなう。

 未知。「昔、誰かが歩いた跡をたどれば、私の道となる。」

 山頂では大江さんをかしらに戸貝さんと内山さんがテーブルとベンチをせっせと作っている。越後のおなごは良く働くと感心しながら、写真を撮る。掘りだした雪を風上に積み、風よけにして、青空ダイニングの出来上がり。

 食事を済ませると、ビーコン講習。成海さんがビーコンを隠して、伊藤さんと二人で捜索開始。これの扱いにはコツがいる。二人とも見当違いの場所に導かれる。しかも同じところだから、気味が悪い。「本当に何か埋まっているんじゃないか」という声が聞こえて、その場を離れることにした。ビーコンの電波は波紋のように発信されているそうだ。文明の利器はなるほど曲者(くせもの)だ。定期的に訓練をする必要があると感じる。

 今日、みんなでつけた足跡も北風と太陽が消してしまう。越後の藪山、棒掛山。インターネットで検索すれば、記録は豊富にある。だけど、今日の道はみんなの記憶の中にだけある道なのだ。