1. 山域・メンバー
山域・山名 | 飯豊/飯豊本山 |
ルート | 大日杉小屋~地蔵岳~御秘所沢~飯豊本山、往復 |
地図 | 飯豊山・岩倉(1/25000) |
山行内容 | 山スキー |
メンバー | (L)渡辺 (峡彩山岳会) |
2. 行動記録
記録 | 渡辺 | |
日程 | 2009/5/24・晴れ時々曇 | |
タイム | 5/24 | 大日杉小屋5:45~地蔵岳8:15~本流1250m地点9:15~黒井堰10:45~御秘所沢出合11:10~飯豊本山13:40~一王子14:30~黒井堰15:30~地蔵岳17:00~大日杉小屋18:35 |
報告
新潟からは石転び沢や鳥海山が手軽な山スキーコースであるが、この地域に住んでいる岳人の端くれとして一度は飯豊本山から滑りたいもの。本山東面ならば大日杉小屋から日帰り圏内で、今期も記録が何例かある。小雪の今シーズンは「既に時期遅し」と思ったが、週末の天気も今ひとつで、来シーズンの課題として本流下降点の偵察でも出来れば上々と云うことで出かけた。
大日杉小屋~地蔵岳~御秘所沢出合
週中の天気が良すぎたのか、土日は芳しくない予報。大日杉小屋は車が4台であった。スキーと靴をザックに取付けると荷は重くなるけれど、こうしてスニーカーで歩くのが自分のやり方である。この時期なので登山道の雪はもう無いだろうが、ニセ地蔵あたりからスキーを使えれば嬉しいと目論んでいた。
1300m位から雪が現れて、靴を履き替える。雪は切れ切れなのでスキーは使えない。地蔵岳で本山とご対面、本社ノ沢が素晴らしく、本山東面のメインコースはここに違いないと思った。天気も上々で、今日は山頂まで行けるかも知れない。
登山道に雪は有る物の繋がりが宜しくなく、脱着の手間を考えるとスキーを使う意味は無さそうだ。これは想定内でツボ足で進むが勿体無い。50mのコブを登下降ながら本流筋を見ると、雪は有るがもうすぐ水線が出そうである。側壁の雪は充分だけれど、10m級の直爆が出るとヤバそうである。
目洗い清水付近から本流1250mを目指して下降する。最後の降立つ所が怪しいのでツボ足のままとした。結果的にスキーでもOKだったが、肝心の本流が既に開いる。側壁の雪は充分なので、この程度の渕を交わすのであれば問題ないけれど、滝が出るとどうなるやら。ダメ元で先に進んで、次回の為に少しでも情報を集めることにした。
水線は凹みが始まっており、雪渓中央に立つ気はしない。右岸沿いを200mほど行った所で左から支沢が出合う。その先は滝が一発ありそうで、本流はそこから左折している模様。おそらく其処にも滝が有るのだろう。ここで左岸に渡って最初の滝に取付きたいが、何処からかゴウゴウと篭った水音が聞こえる。支沢が壁を流れ落ちる音かと思いたいが、本流の音だとすると既にここも怪しい。左岸に渡った所で先の見通しがある訳では無く、第一に帰りもここを通過するのはもっとイヤ。一回は博打できても二回は無い、と云う事で撤退と決めた。
登山道に戻ってまだ10時前、どう云う訳か天気は良くて、このままスキーを一度も履かずに帰る気も無い。草履塚まで行って辺りを滑るか、黒井堰から御沢を下降して御秘所沢に入るか。沢中を見ながら進み、あわよくば御秘所沢を狙う事にした。御秘所沢の出合は1350m、先の下降点は1250mで、沢中で標高100mを上げれば大丈夫と考えた訳である。
御秘所沢出合の少し上部が見えた。開けていて、雪量も大丈夫そうに見える。
御秘所沢そのものは、全く問題ない。核心は御沢の下降200mであろう。地形図から滝が2~3箇所あると想像はできるが、標高を上げて沢のスケールが減じるのと、積雪もそれなりに残っているだろうと想像する。何よりこの天気、本山が「おいで」をいているのではないか。(→気のせい?)
登山道から5分で黒井堰、沢に降立つのに全く気を使わずに済むので大いに助かる。スキーを履き御沢を下ると水流が2箇所、滝と渕であった。乗越しにスキーは脱ぐが周りの雪が多いので、通過は楽勝である。
縦溝が始まった雪は、滑降と云うよりは下降するだけ。2週前に石転び沢に行った時は縦溝を全く感じなかったのだけれど。最もあの時は、ホン石転び沢までデブリだらけで、縦溝どころでは無かったのも確か。自分的には今期初の縦溝で、シーズンの終わりが近いと感じた。
御秘所沢出合~本山~地蔵岳
出合付近は雪の心配は無い。ここまで長かったがあとは天気だけ、滑りのためにもガスられない事を願う。御秘所沢は開けており、大きな直爆も無いと思われる。逆に遡行の対象としては魅力が薄いかと。草履塚の直下を通過すると御秘所の岩峰が正面になった。
自分が山岳会に入って始めての冬山は、正月の飯豊本山だった。その時に姥権現に手を合わせたり、先輩にサポートして貰って御秘所をやり過ごした事を思い出す。そこを季節こそ変わるが一人で裏側から訪れている事になろうとは、道具と情報の進化だと思う。
標高1900mで沢型が無くなり、一王子からの斜面になる。草履塚も眼下になると一王子までは一投足なのだが、最後はバテた。本山に向かう前にビールを埋めてシールを剥いでいると、稜線にガスが掛かってきた。ここまで持ったのだから充分、視界の無い本山だったけれど、充実した達成感で満たされていた。
神社から本山の長いこと。標高で3mしか違わないのでけれど、これを省く訳にもいかない。一王子に戻って乾杯、至福の時間をガスが取れるのを待って過ごす。
時折、日差しは出るのだがなかなか晴れない。出発時間が近づいたので準備に掛かり、最初の100mは「捨て」かと萎んでいた。靴を締めスキー踏むと、何とガスが晴れてきた。草履塚まで見えればもう大丈夫、2分も晴れてくれればお釣りが来ます。今日は最後まで運が味方した様だ。
一王子の直下は、斜度・雪質、申し分なし。御秘所の直下に吸込まれる景観も宜しい。草履塚が目線の下になると縦溝が出始め、U字谷をターンしていくのが億劫になる。もう滑りは楽しみ、最高の景色も見た。縦溝を切りながらターンを稼ぐ事に意味は無く、帰路の体力温存をしよう。ギルランデ気味に進んで出合に到着、後半戦の4時間が始まる。
標高差200mは気が重たかったが、意外とすんなり黒井堰に戻った。もう危険地帯は無く、御坪で稜線を見渡す。本山はガスの中、三国方面は晴天である。白川の源頭が壁となって七森に突上げ、その後ろに三国小屋が豆粒の様に見えた。
登山道の微妙な起伏が堪える。登り返しても地蔵岳から数百メートルでも滑れるのであればこの起伏も何のことは無いのだけれど、今日はそこからも登山道歩きが待っている。地蔵への最後の登り、本山が姿を見せた。あそこまで行けて満足の一日、次は本社ノ沢だ。