1. 山域・メンバー
山域・山名 | 飯豊 |
ルート | 胎内川本源沢遡行~胎内尾根下山 |
地図 | 二王子岳・木八差岳(1/25000) |
山行内容 | 沢登り |
メンバー | (L)都丸、楡井、小畑(峡彩山岳会) |
2. 行動記録
日程 | 2007/8/14-17 | |
タイム | 8/14 | 胎内ヒュッテ6:00(バス利用)~奥胎内橋右岸側6:05~奥胎内ダム(建設中)入渓6:50~団子河原13:00(BP) |
8/15 | 団子河原6:50~本源沢出合14:00~テント場17:00(BP) | |
8/16 | テント場6:40~稜線14:15-14:50~テント場17:10(BP) | |
8/17 | テント場6:00~奥胎内橋左岸側10:00~胎内ヒュッテ10:30 | |
その他 | ルート図 |
報告(都丸)
1年目は増水で川に足を着けることもできず、2年目はメンバーの日程が合わず、3年目にしてようやく胎内川での夏山合宿に入れた。遡行中は好天が続き、水位は低く雪渓は皆無。最高の条件で成功させることができた。
8/14 下部ゴルジュ
今年から胎内市が運営している無料バスに6:00に乗り込んで奥胎内橋右岸側で降ろしてもらう。日中ならガードマンが詰めているところだが、早朝なので橋付近は無人だった。トンネル入り口にかかるゲートをA0で乗り越え、真っ暗なトンネルを抜ける。仮設橋の手前から懸垂下降で本流に降り立った。恐怖感すら感じた2年前の増水時と比べると、水位は問題にならないほど低い。とはいえ太い流れは飯豊の本流筋の風格を漂わせる。
下流部はゴルジュの中に釜とトロが連続して頻繁に泳ぐ。今回ウェットスーツは全員が装備し、トップで泳ぐためのPFDを1個持参した。適当に先頭が交代しながら後続はザックピストンで楽をさせてもらう。
全体に困難というほどの場所はなかったが、1箇所ピンチに陥った場面があった。釜のある小滝が2つ連なり下流にトロを持つ箇所で、楡井さんが最初に泳ぐも押し流され、右岸を巻いて上部に降りた。ここでPFDにロープをつけて下流に流そうとしたが、2個目の釜で循環する流れに巻かれて下流まで流れてこない。しばらく動きがないので、やむなく私が右岸側をきわどくへつって白泡に漂うPFDにダイブ。調べてみると、ロープに自然にできた結び目が釜の中に引っかかって回収不能になっていた。ここは強い流れに逆らってハンマーを流心に突っ込んでロープをたぐり寄せ、何とか回収できた。最悪敗退が決まりかねない場面だった。
小滝を越えるとやっと明るく開けた箇所があり休む。ゴルジュの底から見上げた狭い空は晴れ渡っている。平地は酷暑に違いない。谷底はウェットスーツを着込んでいるにもかかわらず、暑くもなく寒くもなく過ごしやすい。光に彩られた水と岩の饗宴に半ば夢見心地の遡行が続く。水面に卵を打ちつけたヤンマが空中でぶるっと体を振ると、きらめく水滴がはじけ飛んだ。
にせ浦島のゴルジュは泳いで突破はできず、楡井さんが右壁を低く巻いて後続はロープに引かれる。薬研沢出合から先の「浦島」と呼ばれる廊下は美しい区間だった。膝程度の水位で楽に通過する。
滝沢出合付近から上流は広い河原が両岸に見られる。テント場予定地の団子河原を特定できなかったので、まあここでいいだろうと適当な河原でタープを張った。時間は13:00とまだ早いがたまにはのんびりするのもいい。早速酒を空け合宿の成功を祈願する。淵に浸かったり、昼寝したりして時間を潰す。夕方から下流部に釣り下った。その辺のトンボを捕まえて餌にし、なんとかイワナ1匹を食材として提供できた。流木は豊富で焚き火に苦労はしなかった。
8/15 本流核心部
団子河原から上流は平凡な河原が続く。西俣沢出合から先は両岸切り立った険谷の中に立て続けに滝を掛ける核心部だ。10mの滝は階段状の左壁を登る。特徴的な堰堤状の滝6mは残置ハーケンのある右のルンゼを登る。4m滝は右壁から。大釜のある10m滝は右岸を巻いて懸垂下降する。滝の落ち口を覗くと支点が構築されており、滝の右側を登るルートもあるようだった。次は大きくハングした釜のある4m滝。泳いで左壁に取り付き、水流を飛び越える。
「龍の棲む釜」と呼ばれる大釜のある5m滝はこの沢でも最難関の場所だ。他の記録を見ても大きく高巻いたり無理やり直登してみたりと苦労しているようだ。楡井さんが右岸を低くトラバースして数mの懸垂で降りる。残置は豊富だが途中で際どいバランスになる。ここまでの核心部は荷物が重いので、空身で登って荷揚げするパターンが多かった。懸垂下降で使うことも考えるとロープ2本が必要になる。
本源沢出合付近は両岸急傾斜のスラブで遅くまで雪渓が残っていたことをうかがわせる。坂上沢にちょっと入って覗いてみると、20m位の大滝が掛かっていていかにも険悪だ。この辺りはいい泊まり場でもないので、本源沢に入ってみることになった。本源沢は出合から両岸ゴルジュで連瀑を掛ける。最初の5m滝はまず手前左岸に取り付いてみるが悪く断念。投げハンマーを試してみたところ、落ち口付近にうまく引っかかってくれた。続く5mの滝を右から登り、続く10m滝は左岸を低く巻く。滝上は多少は穏やかな渓相になりテント場も見つかりそうだった。最初は偵察のつもりで出合からずっと空身だったので、一旦出合いまで降りて登り返すことになった。
再び連瀑上に戻り17:00頃、水面に近いが手ごろな広さの砂地が見つかったので今夜の泊まり場とした。沢が細い割に流木はそれなりに集まり、ささやかな宴会を開催できた。
8/16 本源沢を詰めて稜線へ
最初の7m滝は左のクラックに試しにとりついてみるも、あと1歩が出ずに敗退した。残置ハーケンのある右岸のルンゼはかなり悪そうなので、少し戻って右岸を高巻くことにする。とはいえ取り付きは急斜面の草付きでこちらも悪く、経験の少ない小畑の下について少々心配ではあった。
沢に戻ると二俣までは登れる滝が多く快適な遡行が続く。20m滝は直登も可能だろうが簡単に巻けそうだ。どちらを巻くか意見が分かれたので楡井さんが右岸を、都丸・小畑が左岸を巻いた(3分差で勝利)。源流部はゴーロで高度を上げ、いくつかある滝も適当に登れる。最後はCS滝直下で湧き水となって終わっていた。水をありったけ詰めて重くなったザックを背負い直す。
滝上部にも枯れ沢が続き、楽に上がれるかなと期待していたがそう甘くはなかった。枯れ滝がいくつかあり、ロープが必要になったり泥壁で滑落しかけたりと苦労させられた。ヤブ漕ぎに移り14:00過ぎに稜線に到着する。時間次第では門内小屋を目指すプランもあったが、消耗した体力ではもう下山一択だった。ここまで無線の調子が悪く連絡が取れなかったので心配をかけたようだった。携帯電話のアンテナが立ったので支援隊と連絡を取り、明日下山の旨を伝える。
稜線上には多少の踏み跡がある。滝沢峰を越え、郷倉峰を過ぎて見つけた広場でタープを張った。計画的に残しておいた酒と肴で最後の晩を過ごす。
8/17 雨中の胎内尾根を下山
出掛けに降り出した雨はたちまち土砂降りに変わった。ウェットスーツを着直したので寒いというほどではない。稜線上で晴天だと暑かったろうだろうからこの位でちょうど良く、雨のせいで虫もいなくなったので一石二鳥といえる。
奥胎内橋が見えてきた。橋上は工事車両が頻繁に通過している。事前の情報で聞いていた胎内川方面に降りる道が見つからず、仕方なく頼母木川方面の斜面を下ることになった。途中から3ピッチの懸垂下降で橋に降りる。出迎えの谷中前会長・戸貝さん・渡辺さんは橋の手前でガードマンに止められていた。仲間の所に急ぐ。胎内ヒュッテには山田さんも来ていた。雨の下で傘を差しながらの珍妙な宴会で今回の合宿の幕を閉じた。