1. 山域・メンバー
山域・山名 | 北アルプス・白鳥山 |
ルート | 青海川金山谷 |
地図 | 親不知(1/25000) |
山行内容 | 沢登り |
メンバー | (L)太子、都丸(峡彩山岳会) |
2. 行動記録
日程 | 2007/5/26-27 曇り時々晴れ | |
タイム | 5/26 | L字淵下で入渓10:30~15m滝上14:00~BP16:00 |
5/27 | BP6:40~1:1二俣8:15~白鳥山11:30-12:10~坂田峠14:00 |
報告(都丸)
青海川支流の金山谷を遡行した。時期的に早いのでは? という気もしたが、せっかくの太子さんの誘いなので二つ返事で計画に乗った。
さすがに泳ぎのある下流部は寒かろうということでゴルジュ帯の大半をカットしたが、L字淵から上のゴルジュの通過は面白かった。全体を通してみると人工・フリー含む登攀、泳ぎ、釣り、焚き火、草付きやブッシュからの高巻き、雪渓処理と、沢登りのさまざまな要素を含む充実した山行になった。
下流部ゴルジュ(一部)
前日に雨が降り、また今の時期に泳ぎはきついということで下流部のゴルジュは大半をカット。左岸の鉱山道を利用し、ガイドの記述で言うL字淵の下で入渓する。なおアプローチについては地元集落の作業道を通るため詳細は伏せる。
L字淵(1)は奥に2m滝がかかる。トロは意外と浅く歩いて通過できたが奥の2m滝は直登できない。落ち口に向かって外傾したバンドを際どくトラバースし、カムで一箇所支点を取ってから落ち口の岩棚に飛び降りた。今回はノーミスで通過できたが、支点がとりにくくセカンドの確保が難しいことを考えるとあまりおすすめのルートではない。すぐ上に3m滝がかかり右壁の下部はハングしている。流木を立てかけ、スリングの臨時アブミをかけて人工で越える。セカンド確保の体勢に入ろうとして「あっ!」うっかり離したATCガイドが岩の滑り台を転がっていく。4,095円が急流に消えた。がっくりしているわけにもいかないので気を取り直して半マストでの確保に切り替える。太子さんが登る際には流木が落ちてしまって苦労したらしい。
右岸から支沢が2本滝を掛けて合わさる。陽が当たって多少は暖かくなってきた。先にちょっとしたトロ場があり、途中で足がつかなくなってわずかな泳ぎになる(2)。太子さんは大分寒がっていた。廊下(3)の先にある釜のある1.5mほどの小滝は水に入りたくないので、左壁にカムをセットしてかけたロープをつかみ、体重を預けて振り子の要領で落ち口に抜ける。ゴルジュ内では全般にカムが有効だった。小滝の上にかかる15m滝(4)は左岸の支沢から巻き、30mほど登ると鉱山道に出る。道脇に鉱山跡があった(5)。
釣りと焚き火を楽しむ
鉱山道はそのまま滝上に続いてすんなり渓に戻る。ゴルジュは穏やかな河原に変わった。ここからは釣りタイムだ。太子さんは2日前に偵察釣行に入った際20匹以上を釣った(全てリリース)そうで胸躍る。が、期待に反して釣果は思わしくなく、夕方までに私が1匹、太子さん3匹で終わってしまった。足跡らしきものがあったので他の釣師が入っていたのだろう。
テン場の手前で太子さんが見つけた鳥の巣を教えてもらった(6)。証言によれば、水際をへつっているといきなり壁から鳥が飛び出して水中に潜っていった。出てきた場所をよく見ると、岩の隙間の岩棚に巣とヒナが隠れていて、うっかりすると手をつっこんでしまうところだったという。
営巣場所や水にもぐったという行動からしてカワガラスだろう。渓流ではおなじみの鳥だ。
巣は水面から2m足らずの高さにあった。この程度の高さで増水に耐えられるのだろうか? ミニ洞窟状だから雨がかかることは少ないだろうが…。親鳥は外敵から隠すように巣をつくるわけで、探そうと思ってもなかなか見つかるものではない。偶然が重なって発見できたわけだ。無事に巣立ってほしい。
テン場は砂と小砂利の平坦な台地で居心地が良い(7)。ローソクの跡があることから他のパーティーも利用しているようだ。月が明るいのでライトはつけない。火を囲んでゆったり語らう。
雪渓多く残る源流部
翌日もしばらく河原歩きが続く。8m滝(8)は左岸と右岸とに分かれて高巻いてみたところ、右岸の方が良いようだった。3:2の二俣を過ぎ、右に入ろうと予定していた二俣(1:1)に着くとすぐ上で雪渓がかかっていて気後れする。話し合い、ガイド通りに行くのもどうかということで一つ奥の二俣を詰めることになる。ゴーロで高度を上げると支沢の流入地点で大きな雪渓が残り、本流には8m滝がかかる(9)。右岸の草付き混じりの泥壁から巻く。滝上にも雪渓が出てくる。
上の1:1の二俣を右に入り、小滝をいくつか登る(10)と雪渓が谷を埋める。下には滝が予想され谷底への落差もありそうなので途中からアンザイレンして登っていく(11)。多段60mの大滝(12)は水量は少ないが直瀑でとても登れるものではなく、右岸の細尾根を使って高巻く。上の小滝をいくつか登るとそろそろ遡行は終わる。水が枯れてから10分程度のヤブこぎで、白鳥山から南よりの栂海新道に出た。
源流部は大滝を除けば登れる滝が多く巻きも悪いところはない(ただし雪渓の下の状況は不明)。要所でロープを使用した。
5/27は白鳥山の山開きだった。あまり広くはない山頂に100人あまりの人がごったがえす、通常の山行時には考えられない景色が見られた。異質な私達の格好はやはり悪目立ちしたようでいろいろ聞かれたりして戸惑った。栂海新道を拓いた小野健さんと記念撮影をさせて頂いたりしてから下山した。
■参考資料
豊野則夫. 2006. 北アルプスの沢. 白山書房.