頼母木川大瀬戸沢曲り沢(飯豊・滝沢峰)[沢登り]

1. 山域・メンバー

山域・山名 飯豊連峰・滝沢峰
ルート 頼母木川大瀬戸沢曲り沢
地図 木八差岳・二王子岳(1/25000)
山行内容 沢登り
メンバー 都丸(L)、渡辺国(峡彩山岳会)

2. 行動記録

日程 2006/8/19(土)晴れ
タイム 胎内ヒュッテ6:30~足の松登山口(バス利用)6:40~砂防堰堤7:00~小俣沢出合8:30~曲り沢出合11:00~稜線15:45-16:45~池平峰19:00~胎内ヒュッテ22:00
その他 ルート図

報告(都丸)

本流のゴルジュを楽しんで一日で登下降できるルートとしては時間的にぎりぎりの線と読んで本日のルートを設定した。記録の持ち合わせがないのが不安だったが、結果的にはなんとか日付が変わるまでには下山できた。にしても少々強行に過ぎたかもしれない。


(1)スリット堰堤


(2)最初の3m滝


(3)落ち込みをへつりでかわす


(4)小滝と深い淵がつらなる

下部ゴルジュを楽しむ

ヒュッテには福島からの3人パーティーがいて楢ノ木沢鴨沢を遡行するのだと聞いた。入渓地点まで歩きの予定だったが、ちょうど客待ち中だったバスを利用することにした。時刻表では7時発になっていたバスには乗客が他にいなかったので6:30から運行してもらえたのは助かった。
砂防堰堤に着いたのは7:00(1)。左のはしごを登って降りる。序盤は豊富な水量がゴルジュの中で小滝と深い淵を作り出している。最初の3m滝は左壁から、つづく小滝や落ち込みをきわどいへつりで抜ける(2)(3)。4mスダレ状の滝は念のため確保して左壁を直上(4)。水はさほど冷たさは感じない。心配していたアブもほとんどいない。代わりに乱舞するトンボが食ってしまったのだろう。真夏の快晴の空の下、平地とは違って涼しく快適な遡行が続く(5)(6)。


(5)最初の雪渓


(6)ゴルジュとゴーロの連続


(7)手前左の壁を登った


(8)へつりが続く

下部と似たような渓相が続く大瀬戸沢

小俣沢は1:2の水量で左から合流している。直後の3m滝を簡単に越えるとトロの先に3m滝(7)。右岸から滝をかけて支沢が入っている。泳いでとりつくのも難しそうで、右岸手前の垂壁にとりついてガバをつかんではい上がる。へつりながら進む(8)と正面から15m滝が轟音とともに落ちる(9)。直登は一目で不可能。ロープを出して左岸のルンゼから高巻く。登り出しは快調だったものの、上部は浮石だらけの草付きでかなり悪い。支点もとりにくく苦労した。下流で右岸からヒドが入っているので、こちらから巻いたほうが早く通過できたかもしれない。滝上は再びゴルジュ内に小滝と淵の連続となり、問題なく越えていける(10)。


(9)高巻きに時間を食った15m滝


(10)堰堤状の3m滝


(11)曲り沢出合の雪橋

小滝多く、それなりに手ごわい曲り沢

曲り沢出合は雪橋がかかる(11)。曲り沢に入るとすぐに左岸から数本の支沢が滝をかけて流入している。小滝をいくつか越えた後の8m滝は右岸のバンド状から行けそうだったが、泥壁の途中で行き詰ってしまった。渡辺さんが戻って左岸を巻いてロープを出して助けてもらった(12)。その後は小滝とゴーロを交えた急登となり高度をかせぐ。2段8m滝と続く6m滝は登れず左岸を巻いて懸垂で降りる。8m滝は右の泥まじりのルンゼから登るが途中が悪い(13)。渡辺さんが登りハーケン一枚を打って乗り越す。続いて登ると古い残置ハーケンがもう一枚あり、こんなマイナーな沢でも登る人はいるのだなあと感心した。続く5m巨岩CS滝は右の岩にはさまれた空洞を空身で登って荷上げする。滝場が終わる標高1,050m付近に大きな雪橋がかかる。先が見えるのでダッシュで下を走り抜けることにする(14)。雪橋の下では夏の暑さに融けた氷が氷雨となって体を打つ。疲れた体に100m走がとどめを差して息も絶え絶えになってしまった。

雪橋を抜けると水量はがくっと減り、細かな支沢がいくつも入る。早くも源頭の様相となった。水を汲んで詰めの登りにかかる。途中までは枯れ沢状で登るのも容易だが、次第に傾斜が立ってきてヤブが濃くなってきた。枯れ沢登りとヤブ漕ぎを交えて結局1時間半かかり、滝沢峰の西側の稜線にたどり着いた。途中でどこからかドーンという音を聞き、雪渓が崩れた音の大きさに驚く。展望抜群の稜線上の岩場でビールを開けて乾杯。


(12)上の8m滝は登れず巻く


(13)右壁をきわどく登る


(14)雪の屋根の下を走る

胎内尾根を延々と下る。最後は……

池平峰周辺までの旧登山道は踏み跡程度でヤブが濃い。時々道を見失いかける。それでも純粋なヤブ漕ぎとは比較にならないほど楽だ。池平峰から下部は道がしっかりしていて歩きやすい。とはいってもバテバテに疲れた二人の歩みは重い。休み休み尾根を下りきるまで5時間以上かかった。沢で汲んだ水2リットルは使い切っていた。

頼母木川にかかる吊り橋を見て一瞬呆然。踏み板の固定が片側すべて外されているので普通に歩いての通過はできない。沢床までは遠いし、暗闇の渡渉は危険すぎる。そこで宙ぶらりんになった踏み板とワイヤーを伝って吊り橋を渡ることにする。ハーネスを締めなおし、クイックドローをワイヤーに引っかける。ライトひとつを頼りにしたカニの横這いは高度感がありなかなかスリリングだ。いい年した男二人が夜中に何やってるんだろうと思われるだろうが当人達は必死である。緊張した後には足の疲れが減ったような気がするのが不思議だ。胎内ヒュッテ到着が22時。15時間行動は限界を少し越えていたかもしれない。