赤谷川笹穴沢[沢登り]

山行月日 2004年9月12日(前夜泊)
山  域 赤谷川笹穴沢(谷川連峰・平標山)
山行内容 沢登り
メンバー L.伊藤(M) 戸貝 内山 都丸
コ ー ス 川古温泉~笹穴沢~平標山~大源太山~下山
タイム 笹穴沢出合6:00~金山沢出合7:25~30m滝8:22~25滝下9:23~30m滝下10:07~大ナメ滝下11:50~稜線14:10~平標山の家発15:30~下山(赤谷川橋)18:10

報告 都丸

前夜は林道でテントを張る。夜は小雨が降り続いていた。4時前に起床、雨もようやく止んでいた。いつ降ってもおかしくない天候のため、不安を持ちながらの出発となった。大源太山経由の下山を予定しているため時間がかかると判断し、早めに出て6:00に入渓する。

最初の小ゴルジュ帯は泳いで突破も可能のようだが朝から水につかる気にはならず、左岸から低く巻く。下流部は4~5m程度の小滝を交えたゴーロ帯が続く。滝は大体登れ、巻く場合も困難はない。当初、やや寝不足気味で体が重く、巨岩の乗り越しにはしんどい思いをした。各メンバーが何でもないところで滑ったり転んだりするので、少々心配な序盤でもあった。ガスが谷底に低くたちこめる陰鬱な天候で視界は悪い。そんな状態のためエンジンのかかりが遅い。

小休止を取った直後に金山沢の出合に着く。プールのある5m滝は左をへつってルンゼを直登、スダレ状の6m滝は左側から水流伝いに登る。その後のナメ床も美しく、天気さえ良ければと残念な思いをした。

ガスが一層深くなる8:20頃、前方にうっすらと大滝が見えてきた。最初の30m滝である。2段に分かれており、1段目4mは右壁を登るがホールドに乏しくやや難しい。お助けヒモを使う。2段目は高度感はあるものの右側をノーザイルで問題なく登れる。続くスダレ状12mは右のルンゼを登ってブッシュ伝いにトラバースする。

階段状の8mを登った後、9:00前に休憩。休んでいる最中、急に周りが明るくなり、水面がキラキラと光り始める。見上げると青空が見え始め、遠くの稜線が姿を現した。沢を覆っていたガスはたちまち消える。ほんの10分足らずで曇天から絶好の沢日和となった。

9:25頃、25m滝に出合う。左壁を登れそうだが確保は必要である。右岸のガレ場から巻くルートも検討したが、沢床にスムーズに降りられるという保障はない。直登することに決めた。私がリードで支点3箇所(うち残置ハーケン2枚)をとって滝上テラスのブッシュでビレイし、後続3人が続く。

10:07頃、幅広の30m滝に着く。ロープを出して右壁を登るルートも考えられたが、左のヒド状が比較的簡単に登れそうだったのでこちらを行く。が、結果的にあまり良くない選択だったようだ。上がっても落ち口までは草付きの斜面で、滑ったら滝下まで止まらない。斜めになるので懸垂下降もできない。仕方なく伊藤さんがリードし、点々と生えているブッシュを頼りにトラバースする。懸垂できそうな場所に一旦集合してから滝上に降りた。2年前の会山行で、滝を巻いて高みに押し上げられて降りられなくなり、結局樹林帯を登って平標山の家の手前あたりに詰め上がってしまったという報告があった。その時のメンバー(伊藤、内山)によれば今回とまったく同じルートだったようだ。今回は強引に沢床に戻ったので同じ轍を踏まずに済んだという事になる。結果的に1時間半ほどかかってしまい、ずいぶん時間を消耗してしまった。

滝上は落ち口から連続する綺麗なナメ床が続く。11:50、今回のハイライト・大ナメ滝に出合う。下から見上げると30m程度の高さだが、その上も延々とナメ滝が続く。米子沢の大ナメと比べるとより勾配は強く登攀的な要素もある。裏側の仙ノ倉谷西ゼンと比べるとスタンス・ホールドが豊富で登りやすい。いずれにしても高度感があるので緊張する場面ではある。時に水流を横切り、右に左にルートを選びながら快適な登りが続く。評判に違わぬ見事なナメ滝で、先頭を行く私はすっかりいい気分になってどんどん登っていった。後から振り返ると少々危険な箇所もあったかもしれない。初心者同行だとロープを出した方が良い場合もあると思う。

大ナメ滝を越え、15m滝を左の巻き道から登って休憩する。時刻は12:00を回った。メンバーは少々疲れ気味の様子である。この後は特に困難な場所はなく、小滝を次々に越えながら標高を上げていく。8m滝は左奥のチムニー状から登ってもいけそうだったが、戸貝さんがルートを探り、手前から左側の大岩を巻くようにしてササ薮に逃げ込んで滝上に戻る。

13:40頃に水流が消える。枯れ沢をしばらく行き、水源と思われるササに囲まれた穴ぐら(まさに「笹穴」)を乗り越えると視界が開けた。平標山と仙ノ倉山とをつなぐ稜線が間近に見え、遡行の終了を告げた。ササ藪を少し漕ぎ、草紅葉の草原を歩いて14:10に登山道に出た。

平標山山頂から大源太山経由で下山する。尾根上の登山道は刈り払いの後で、幅広で段差も少なく歩きやすい良い道だった。林道に降りる頃にはすっかり暗くなり、赤谷川橋を渡ったのが18:00過ぎだった。

笹穴沢は巻き道も良く踏まれており、入渓者も多い様子だった。その割には当日他のパーティーはなく、結果的に天気も良く、美渓を独り占めした一日だった。長時間行動の山行となったものの、景色も美しく登りも楽しく、充実した良い沢だったと思う。

今回はルートミスにより余分な時間がかかってしまった。笹穴沢の核心部以降は樹木が少なく、沢床から少し上がるとササや草付きの急斜面となりやすい。巻く場合は低く小さく、水線通しに登ることを心がけていけばよりスムーズに通過できたと思う。

報告 内山

前夜からの雨は上がったものの出発時はやっとうす明るくなったところでした。入渓してもしばらく前方はガスがかかっていて、晴れるとすごくきれいなのにと少し残念。金山沢の出合までは巨岩の上り下りが頻繁で、体が重い私はさっさと行く皆が恨めしい。しかしその先は登れる滝が多数出てきて、どこから行くか考えながら楽しく歩けます。8時半には青空がぱーっと広がり時間的にも順調で「私達足がそろっていて良い感じだね、お昼には山頂か」などと話していたのですが・・・。そう甘くはありませんでした。核心の20~30mの2つの滝をクリアするのにロープを出し始めたら、1つ目で岩のフェース登りに30分、2つ目で高捲きから本流に戻るためのトラバース懸垂で1時間半費やし、あっという間に2時間経過。メインの大ナメは30mの滝の上部から始まっているので滑ったらヤバいなと、とても緊張しました。怖いもの見たさに振り返ってみると足はすくむし、ナメは延々と続くので安全圏に着いた時には思わず「あー怖かった」が口から出ました。リーダーも心中穏やかでなかったよう。あらためて振り返ると日の光を受けた沢がきらきら輝き、来ることが出来て良かったなあとしみじみ思いました。その後1ヵ所高捲きで足が地に着かない笹ヤブ漕ぎがあったものの、あとは難しい所は無く本流をつめ、最後はカラリ。背丈以上の笹が覆い被さってきたのもほんのつかの間で笹はすぐ低くなり、一面の草原に出ました。稜線がぐるりと取り巻く中、草紅葉になりつつある草はらと緑の笹の模様が大きく広がる草原に出たことは私にとって最高の幸せでした。

出たのはちょうど平標山と仙ノ倉山の鞍部。14時を過ぎようとしていました。そのまま平標山経由平標山の家まで行き、やっと武装解除。これから大源太山まで登り返しです。三国山へ行く方の登山道は蛇が横切ったり登山道脇にびっしりとブナハリが出ていたり、あまり人が通らないもよう。大源太山周辺は登山道がよく刈られた上にふかふかの落ち葉で駈けながら下りました。だんだん陽も落ち下部の杉林は暗くなると迷いそうなので急ぎます。ぎりぎり真っ暗になる直前に車まで戻ることが出来ました。この日は13時間行動でした。

今回は大ベテランが不在の中、皆が慎重に行動し美しい沢も充分堪能出来て、大変有意義な山行になったと思います。