飯豊川オオヤット沢下の沢(烏帽子岳)[沢登り]

1.山域 メンバー

山域 飯豊川支流オオヤット沢下の沢(烏帽子岳)
地図 二王子岳・蒜場山(1/25000)
内容 沢登り
メンバー 太子(L)、都丸(峡彩山岳会)
ルート オオヤット沢下の沢遡行~オーサンカイ尾根~ホウジョウ沢下降(途中まで)~オーサンカイ尾根下山

2.行動記録

日時 2002年9月22日~23日
タイム 飯豊川渡渉7:00~25m滝10:20~下の沢出合12:00~稜線17:30(ビバーク) 9/23 出発5:30~ホウジョウ沢幕場6:30-9:00~飯豊川渡渉点14:00
その他 ルート図

報告:都丸


(1)5m滝


(2)2段15ナメ滝


(3)下の沢の渓相


(4)V字谷 8mcs滝が見える


(5)下流方向を振り返る


(6)尾根の風穴

オオヤット沢は烏帽子岳の北面から流れて飯豊川に合流する。稜線上に登山道はないが、オーサンカイ尾根は飯豊川の取り付きから途中まで踏み跡が続いていて、東側のホウジョウ沢と合わせて烏帽子岳に上がるルートとして利用できる。オオヤット沢は下流部の連瀑帯の通過が一つのポイントになるだろう。今回詰めた支流下の沢は顕著なV字谷で、両岸急斜面の草付きのため高巻きは困難。滝は全て直登または低く巻くしかない。通過には一部に人工的な手段を必要とする。

2パーティー編成で、佐藤パーティーがオーサンカイ尾根~ホウジョウ沢経由で烏帽子岳を目指す。太子パーティーはオオヤット沢から尾根を乗り越してホウジョウ沢に下降する。ホウジョウ沢源流部のテン場で合流する予定になっている。

飯豊川を渡渉して7時頃遡行開始。序盤は開けた河原が続く。太子さんが釣りながら行く。釣り師はそれなりに入渓しているようで当たりはない。5m滝を越えた先の落ち込みと淵は、暑い日なら泳ぐのも良さそうだ。今回は右岸から巻いて懸垂で降りる。大釜のある6m滝は左岸手前のリッジを登り、ブッシュに支点を取って懸垂トラバースで落ち口へ抜けた。

両岸狭まり次第に圧迫感を増してきた。釜のある5m滝が現れる(1)。地形図上で小さく蛇行を繰り返している区間で、この辺りが前半の核心部だろう。昔の記録では左岸を大高巻きしている。今日は行けるところまで行ってみようということで突っ込む。5m滝は滝の直下まで水際をへつって右壁を登る。少し行くと沢は左に屈曲し、2段15mナメ滝が豪快に滑り落ちている(2)。取りつきが難しく、最初の1、2歩を人工に頼る。中段で少し傾斜が緩くなるので右岸から左岸へと移る。水流が強いので押し流されないよう、上から伸ばしたロープを手がかりにして渡渉する。沢はすぐに右に曲がり、目の前には25m直瀑が落ちる。一目で直登は不可能。巻きのルートを検討する。右岸は登れない。左岸のリッジから取り付けそうだが、傾斜はかなりきつい。都丸トップでロープを伸ばす。草付きとブッシュが混じる土崖で足場が悪い。30分ほどかけて苦労しながら登り、痩せ尾根の松でビレイをとった。尾根に上がると落ち口にはすんなり出られる。

滝上は再び平坦な河原となる。当初入る予定だった上の沢出合に着く。まだ時間に余裕があるので下の沢まで行ってみようと提案し、太子さんの了承を得た。結果的には余分な苦労を増やした決定となってしまったが。下の沢出合までは特に問題はない。

下の沢は本流から東に別れ、オーサンカイ尾根へ向かって一直線に突き上げている(3)。入ってしばらくは平凡。序盤の滝をいくつか快適に越えていく。次第に両岸は急斜面の草付きスラブとなる。手掛かりに乏しい5m滝に前進を止められた。直登はできない。太子さんがロープを引いて左岸の壁を登る。まっすぐ上がるが途中で行き詰まり、仕方なくクライムダウン。「落ちるかもしれない」の声。ロープを握る手に力が入る。かなり厳しそうだ。落ち口と同じ高さから1ポイント人工で辛うじて抜けた。

行く手はさらに狭まり、大地を鉈で叩き割ったような壮絶なV字谷が眼前に続いている(4)。沢床には雪塊が転がり陰惨さを増している。遠目に穴のような地形が見え、近づくとそれは8mCS滝下側のハングした部分だった。巻きはもちろん不可能。投げハンマーを試みるもうまく行かない。時間が無為に経過して焦りがつのる。こんな場所でビバークできるはずがない。今日中に稜線に上がらなくては……。逡巡を重ね、ようやく太子さんが左壁に弱点を見出した。わずかな岩角を利用し、アブミを使った人工登攀で登りきった。

いくつか滝を登ると水は枯れる(5)。源頭からは草付きにブッシュが混じる急斜面の登りで全く気は抜けない。腕力を振り絞って体を引き上げていく。尾根にたどりつく頃には日も暮れた。足は疲労を隠せない。雨が降ってきた。既にライトが必要なほど暗いのでホウジョウ沢への下降はあきらめ、稜線直下の斜面でビバーク体制をとった。枝を集めてツェルトの下に敷く。なんとか横になれる程度の傾斜にはなった。

快適とは言えない夜を過ごした翌日は早めに出発した。昨日は気づかなかったが、すぐ近くの尾根上にはヤブの薄い平坦な場所があった。ここでビバークできれば良かったのに。ホウジョウ沢への下降は斜面をまっすぐ降りる。ヤブと草が続いているのでロープは不要。降りた沢床にはちょうど佐藤パーティーが残した赤布が残されていた。しばらく遡行すると空のテントがある。既に家主は烏帽子岳へ向かった後だった。我々の遡行はここまで。酒を飲み飲み待機することとなった。

佐藤パーティーと合流後はホウジョウ沢を少し下降、適当な場所からオーサンカイ尾根にとりつく。ヤブこぎを交えて踏み跡をたどり、飯豊川渡渉点まで下った。途中オオヤット沢を挟んだ対岸の尾根に風穴が開いているのが面白い(6)。入った人はいるのだろうか?