頼母木川足ノ松沢[夏山合宿]
山名/コース 飯豊連峰 足の松沢
日時 8月11日~12日(1泊2日)
メンバー L.丸山 松原 中沢
記 丸山
私にとっては昭和48年7月22日に坂井厚さんに連れられて遡行して以来、実に28年ぶりの足の松沢でした。その行動記録は「岳神12号」にルート図と共に発表させてもらっています。沢登りを始めたばかりの当時19歳だった私は、先輩の後を付いて行くのが精一杯ではあったものの、それなりに楽しく充実した山行をやり遂げた満足感を、長い年月を経た今も忘れる事は出来ません。沢の中の様子も断片的に記憶していて、今回はその記憶を確認するのも楽しみの一つでした。
胎内ヒュッテで名古屋からの胎内川本流を目指す三人パーティーと挨拶を交わし、6時30分出発する。林道を離れ、足の松尾根の急登に掛かる手前からハッキリした踏み跡を辿り、ブナの段丘を下降してアゴク沢出合い上流の足の松沢に降り立つ。さっそく小滝と小ゴルジュ帯を通過しながらの適行となる。2段20メートルを左岸より高巻くとイワナ釣り用のへツリ道が現れ、時々大物イワナの魚影に興奮する。直登不能な5メートル滝の手前の左岸に細いザイルがセットされていた。自分で書いた昔のルート図は概ね正確であるが、落ちている滝も数多い。それでもルート工作をしたり、写真を撮ったり、ルート図を書いたりは大変であり、何としても今日中に遡行を終えたい思いもあったために、途中でルート図を書くのはあきらめた。そしてこの沢のポイントとなるS字滝(昔十人以上のパーティーで入った際、落石で成海君が怪我を負った滝)となる。右岸の急傾斜を50~60メートル直登するが、浮石が多く多人数での通過はいかにも危険が多い。トップの私は途中の岩場の基部をトラバースしたが、本当は岩場の上部まで直登してからヒド2本の上部を横断して下降した方がよい。自分はザックを置いて偵察に行ったがザックを置いた地点が分からなくなり、すぐに戻れない失敗をしてしまった。最後は懸垂下降で沢に下り立つ。足の松尾根からよく見える2段の滝を難なく越し、5メートル滝の落ち口に懸垂下降した後に12時の定時交信となる。足の松尾根を行く菊谷さん、大江さんの支授は本当にありがたい。A隊も頑張っている様だ。上部に雪ブロックが架かり、外傾している5メートル滝の右岸を直登し落ち口に懸垂下降するがすぐに直登の難しい5メートルが表れ、せっかく懸垂下降した地点まで上り返して草付の接点をトラバースする。先行パーティーの残置シュリンゲを利用して懸垂下降をするが、もう少し高巻けば難なく沢に下降する事が出来た。ゴルジュが後退して穏やかな感じがして来たが、前方からの鳥肌立つ冷たい吹き出しと視界を遮る霧の先に巨大なスノーブリッジが現れた。幸い左岸の雪渓末端に取り付く地点があり、安定した200メートルの雪渓に乗る事が出来た。28年前に恐怖心を覚えた黒滝で雪渓は終わっていて、思いの外、簡単に右岸の斜面に取り付けた。滝の落ちロヘの下降はいかにも頼りない細い潅木を利用した記憶があったが、今回はしっかりした潅木に成長していて安心しての下降であった。菊谷さんからの情報では局地的な豪雨に注意との事であったが上空の雲の動きが何とも気掛かりである。雪ブロックの残る急傾斜な支沢のすぐ上流に8メートルの滝が架かり、右岸を直登してから7~8メートルトラバースして滝の落口に出られそうであるが、ランニングビレーのハーケンを打つリスの良い地点が無く、松原さんも頑張ったが安全第一として一旦、滝を下降して20メートルほど戻り左岸より高巻く。4日後の太子・渡辺・都丸のパーティーはこの滝を直登した様だ(少し悔しい思いをする)。それからは悪場は特に無くなり、ひたすら高度を稼いで行く。今回の遡行を28年前と比較して一番感じたのは高巻時に掴んだ草付の草といい、沢の源頭付近の身の丈を没する元気な草といい、沢登り時の手掛かり・足掛がりとしては、細くて頼りなかった昔とは雲泥の差があり、しっかりとしていた点である。自説であり、当てにならないが地球の温暖化・酸性雨の元と言われる硫黄酸化物に僅かに含まれているアンモニアの影響で植物の成長が促進した、それともただ単に季節が20日遅いだけなのか、などと身の丈を越す草を漕ぎ、久し振りの飯豊の渓谷で地球環境の変化に思いを巡らしていた。岩の割れ目より吹き出している冷たくておいしい最後の水場で休憩を取る。中沢君の持参した、プドウ糖とクエン酸の錠剤を補給したためか、最後の登りの足取りは軽く、4時20分に予定通り稜線最低鞍部に出る事が出来た。松原さんには初めての飯豊の沢登り。中沢君は28年前の自分と同じく足の松沢が初めての飯豊連峰登山となった。蔵王の鈴木さんと久し振りに声を交わし、大江さんの待つ順母木小屋へ向かう。小屋到着とほぼ同時に頼母木川の凛次郎沢を登ってきた本間リーダ-のA隊4人パーティーも小屋に到着。予想では沢の中でもう一泊と思っていたのにお互いうれしい合流である。大江さんの豚汁に舌鼓を打ち、お互いの健闘を称えて楽しい夜を過ごすが他のパーティーに気を使い早々に眠りに付く。12日は下山するだけである。ゆっくりと朝の時を過ごし、雨具を付けて出発する。蒸し暑くたっぷりと汗をかいて足の松尾根を下山する。途中で雨はやみ、谷中・戸貝・内山パーティーと合流し、冷たいビールをご馳走になる。尾根の取り付きで小山さんの出迎えを受け、大樽沢の旧林道では、太子・伊藤の二人が足の松沢で釣ってきたイワナと豪勢な食事に、ついついお酒もはかどってしまう。渡辺家族も合流して総勢15名の夏山合宿の前半戦は無事に終了した。