東北南部/飯豊・梅花皮岳 [山スキー]

 

1. 山域・メンバー

山域・山名 東北南部/飯豊・梅花皮岳
ルート 飯豊山荘~石転び沢~十文字鞍部~梅花皮岳~ホン石転び沢~石転び沢~飯豊山荘
地図 飯豊山・長者原(1/25000)
山行内容 山スキー
メンバー (L)渡辺 (峡彩山岳会)

2. 行動記録

記録 渡辺
日程 2010/05/22 曇り後晴れ
タイム 5/22 飯豊山荘7:05~石転び沢出合9:10~梅花皮小屋11:40~梅花皮岳12:30-13:10~地竹原13:35~飯豊山荘15:20

報告

4月末に石転び沢へ行ったが、新雪にビビって北股沢出合で帰ってきている。飯豊山荘への町道が今週に開通したので、年に一度は石転び沢へと再訪をする事にした。あわ良くば本社ノ沢に続き、ホン石転び沢で成果を上げる事が出来るか否か。

飯豊山荘~石転び沢~十文字鞍部~梅花皮岳

飯豊山荘は15台くらいの車があった。もう雪の無い林道を、温ミ平を目指して歩く。砂防ダムから山道に入ると、思ったほど支障木が無くて歩きやすい。「うまい水」への斜面は雪が微妙に残っていて、コース取りに注意を要した。薄い所も有ったので、気温の上がる帰りは落ちている雪が有るかも知れない。

入渓地点は地竹原の先からで、スキーの担ぎから解放された。滝沢~梶川出合の辺りはまだ木々の散乱が少なく、この時期としては雪面が汚れていない。これは嬉しい、スキーのソールを気にせずに地竹原まで戻れる訳だ。石転び沢出合は大石の頭が出ている。先行者は既に、最後の登りに取付いていた。


石転び沢

 天候は高曇りで、体調も何だか胃の辺りが押されている様な違和感がある。門内沢も何パーティーかが向かっている様子で、梅花皮岳からヒリヒリしながら滑るよりも、こちらの方が快適な滑走だと誘惑されそうであった。梅花皮岳に行ってダメなら十文字鞍部に戻るだけと云い聞かせて、すっかり下がったモチベーションで歩きを続ける。

北股沢出合まで来ると、天候が回復してきた。降りて来たテレマーカーと話をすると、雪はほぼbestの状態で有るとの事。先行者のステップがあり、最後の急登は楽が出来た。


石転び沢 最後の詰め

 梅花皮小屋で荷を下ろす。前日に偶然、鈴蘭山岳会がここから飯豊川を横断して大日岳に登返している記録を見たので、そのトレースを追ったりしてみる。1996年の記録だが、独創的な発想とそれを成し遂げる実力は、とても自分に出来るものでは無いと思う。


大日岳 こんな所をトレースできるのか?

 空は晴れ上がり、風も止んだ。小屋越しの梅花皮岳が遠くに見え、昼寝してここから滑ろうか、などと考え始める。


梅花皮岳

 おお、まだビールを冷やしていなかった。缶を開けるならやっぱり見晴らしが良い所で、と云う事で梅花皮岳に向かう事にする。行ってもホン石転び沢を滑るモチベーションは既に無いが、来年の為に見るだけでも見ておこう。

山頂~ホン石転び沢~飯豊山荘

山頂からは飯豊本山や駒形山が見えて、十文字鞍部とはまた一味違った眺めである。さて問題のホン石転び沢はと言うと、出合まで一直線に見える実に良い傾斜。ウズウズしてくるが、いかんせん出だしが急過ぎる。緩い所はクラックが入り始めているし、十中八九は行けるに違いないが、ここまでの風船の空気が抜けたような気持で突っ込んでは、一瞬のミスが最悪の結果となるに違いない。う~む、残念だがこれは来年の宿題だと、ビールを雪の中に入れた。


ホン石転び沢

 対岸には北股岳と、豊富な雪田で埋まる洗濯平が見える。北股岳の山体は大きく、北股沢右又にはシュプールも有る様だ。ショートターンが連続する綺麗な軌跡は、本社ノ沢で見た先行者の物と良く似ており、「あの方」かも知れないと思った。


飯豊本山の遠望

 ここから見ると、石転び沢と門内沢が双子の様に思える。北股岳を中心として一様に東方へ落ち込むライン、上部稜線から豊富に残る残雪。ここから扇ノ地神の間、どこから行っても帰路は温ミ平となるスケールの大きさを感じた。。

もう冷えた頃だろうとビールを回収に行き、これで見納めとホン石転び沢を覗く。この天気、この状況で行けないとは実に惜しい。そうは言っても山は気合い、行けない時に行かないのも大切な事・・・と未練たらしく眺めていると、最初に反対の右へ行き、左へ廻って高度を7~8mくらい落とせば行けそうな気がして来た。一度ダメにしたのだからと見直せば、増々行けそうな感じでアドレナリンが湧いてくる。そうならばとステップを刻んで坪足で降りると、クラックもそれほど開いては無く、スキーを引掛ける事は無さそうであった。急いでビールを回収し、続いてシールを剥がす。来年も充分な雪が付くとは限らない、などと言い聞かせながら。

さあ、もう気合い十分だ。頂上から一回廻って高度を落とす。そこからギルランデ気味に、スキーで雪を押しのけながら進むとクラックは埋まった。おお、これはもういただき、最初のターンをすると縦溝のヤマが少しガリガリしたが、緩んだ層も充分な厚さで問題ない。フォールラインを離れて上を見ると、薄いスラフがゆっくりと流れて行く。ワハハ、人は学習するものさと、4月の駒ケ岳を思い浮かべる。

3ターンくらいして止まって再び頂上を見上げる、もう大丈夫だ。最初の壁をこなせば適度な斜面となる。北股沢右又で見た綺麗なシュプールで滑れる訳ではないが、自分の技量の内で快適に滑り降りる事が出来た。


ホン石転び沢 上部

 見返すとスタートの壁はもう遠い。スラフで流れたので、ヘタレなシュプールが残らなくて良かったか?


頂上を振り返る

 沢中は意外と広く、滑り頃の快適傾斜がどこまでも続いた。


ホン石転び沢 中盤

 下部はデブリはなかったが、落石が若干有った。ここで右岸だの左岸だの言ってもしょうがないので、早々に駆け抜ける。落石に関しては運まかせだが、右岸からのが多かった様だ。


ホン石転び沢 下部

 出合で石転び沢に合流してフィニッシュ、思わず声が出た。見当違いなのだがもう安全地帯に入った気分である。興奮が収まらない火照りを鎮めながら、石転び沢をクルージングする。
最後は雪が固くなったが、まだ汚れていないのでストレス無く行ける。地竹原でスキーを脱ぎ、お待ちかねの頂上から持ってきた缶を開けた。

下道はブヨが煩いのだが、今日は気にならない。最後に温ミ平から山頂直下の壁と右下に落ちる谷筋が見えて、この喜びにもう一度浸った。


温ミ平から梅花皮岳(ズーム)

  • 石転び沢では物足りない、滑り派の方にはお勧めのコースです。
  • 初の壁が核心で、クラックが入る前が適期か。そこからは広い斜面と素晴らしい傾斜が、石転び沢まで延々と続きました。
  • 本社ノ沢と合わせて、やはり飯豊のスキーは最高です。