能代川支流城ノ入川(宝蔵山~越後白山)[沢登り]

1. 山域・メンバー

山域 宝蔵山~越後白山
ルート 能代川支流城ノ入川
地図 越後白山(1/25000)
内容 沢登り
メンバー L:都丸(峡彩山岳会・単独)
ルート 城ノ入川遡行~890mピーク~越後白山~滋光寺

2. 行動記録

日時 2005/10/10
タイム 入渓7:40~ゴルジュ帯最初の2mCS滝9:00~稜線11:10-11:30~越後白山12:10-13:30~下山(慈光寺)15:10
その他 ルート図

報告(都丸)


(1)支沢の20m滝


(2)2mCS滝


(3)6m幅広滝


(4)5mトイ状滝


(5)6m滝


(6)2段6m滝

信濃川水系能代川は、村松・加茂の低山丘陵の水を集め、五泉・新津の市街地を貫流して小阿賀野川に合流する。中~下流域は近年の災害復旧事業によって川の様相を一変させた。

地形図上の能代川は、村松まで遡って複数の小渓流へと分岐する。この中で沢登りの対象となりそうなのは、越後白山から宝蔵山へと至る稜線に突き上げる滝谷川、城ノ入川、能代川本川あたりだろうか。今回は、中流部で両岸に急峻な地形を抱える城ノ入川を選んで入渓した。能代川水系の記録自体をほとんど見ないのであまり期待はしていなかったが、意外に手強い核心部を持つ、短いながらも興味深い沢だった。

下戸倉の集落を抜けて川沿いの林道を進む。堰堤は3基ある。2基目の堰堤の上流側に広場があり、先の道の状態が悪いので広場にクルマを置く。サクラが一列に植栽されていて下草は対岸までさっぱり刈り払われている。目の前には穏やかな流れ。春には地元の人々が花見を楽しむ場所なのだろう。3基目の堰堤の左岸側に標識があり、「登山道 天狗の庭」とある。地形図上にはない道だ。どこまで通じているのだろうか。堰堤とはいっても半分滝のようなつくりなので直登する。

下流部は平凡なゴーロが続く。途中まで踏み跡が続いていた。沢がS字状に屈曲する区間を過ぎると、右岸から7m滝をかけて支沢が合わさる。少し進むと、一条に流れ落ちる綺麗な20m滝(1)が右岸に掛かっていた。足を止めて鑑賞する。続く本流は両岸がぐっと狭まり、ここから核心部のゴルジュに突入する。

釜つきの2mCS滝(2)。腰までつかって左岸をへつり、チョックストーンの右側から越える。続く幅広の6m滝(3)は水を被らなければ登れそうもない。回避ルートとして右岸のバンド、あるいは左岸のルンゼからのトラバースを検討する。しかしいずれも際どく危険と判断した。覚悟を決めて滝にとりつく。最初から雨具を着込んでいたため、シャワーの中でも体はほとんど濡れず、落ち着いてスタンスを探せた。右から左へと斜上して越える。落ち口付近は滑りやすい。

一旦ゴルジュが切れ、左岸から支沢が合わさる。少し進むと再びゴルジュ状になり、5mトイ状滝(4)が現れる。後から振り返るとこの沢最大の難所であった。左壁からトラバースを試みるが傾斜がきついので断念。本日2度目のシャワークライムに向かう。トイの中に体を押し込む。先の6m滝よりも水圧はずっと強い。スタンスが少ないのでつっぱり気味に体を押し上げる。沢の水を全部集めた猛烈なシャワー(タライの水をぶちまけたのもシャワーと呼ぶのだろうか?)をまともに浴びて足元がよく見えない。手探り足探りでホールド・スタンスを探す。動きに余裕がなくなってきたせいか、袖口から容赦なく水が侵入してくる。水圧に押されて一瞬足元がずれた。落ちても怪我はないだろうが、もう一度登る気力があるかどうか。とにかく焦らず体勢を安定させるよう努める。トイの左側に出っ張った岩にホールドを求め、抱きつくように体を預ける。滑る岩肌をごまかしつつ、やっとの思いで這い上がった。時間にして1分程度のシャワークライムで全身ずぶ濡れになってしまった。一気に消耗した感がある。すぐ上に同じような6m滝(5)。これ以上の水浴びは避けたい。よく見ると右壁をトラバースできそうだ。取りつきが悪く、細い草を頼りにして勢いで上がる。

その後はゴルジュも終わり、小滝を快調に越えていく。右岸から草つきの中をスラブ滝が落ちてくる。飯豊の源流のような開放的で気持ちのよい眺めだ。冷えた体を落ち着かせる。6m直瀑を左岸から小さく巻くと核心は終わり、流れは穏やかになった。平坦な河原を過ぎ、源流部の小滝とナメの連続をのんびりと登る(6)。流れが枯れてヤブを漕ぐこと5分、890mピークの東側の縦走路に出た。

入渓地点までは登山道がないため、当初はヤブ漕ぎ→沢下降で入渓地点に戻る予定だった。しかし、急遽出迎え登山で来て頂いた楡井会長・伊藤さんと越後白山山頂で合流できたので、そのまま滋光寺まで下った。やはり登山道があるのはありがたい。もちろん仲間のありがたみはそれ以上だ。

城ノ入川は大滝こそないものの、核心部には小滝が連続し、それなりに難しい部分もある。今回は6m直瀑を除く全ての滝を登った。天気が良ければ爽快だろう。短時間で遡行でき、手頃な滝登りを楽しめるのでトレーニングにはちょうど良いかもしれない。ただしヒルの楽園となるであろう夏季に入渓する気にはなれないけれど。 問題は下山だが、慈光寺から西回り登山道の462mピーク南側の鞍部から城ノ入川方面に下降すれば、さほど困難もなく渓に降りられるだろう。もちろんクルマが2台あれば今回のように滋光寺に降りるのが簡単だ。何より慈光寺境内の湧き水は美味い。