柴倉川中流部ゴルジュ~支流柴倉沢[沢登り]

1. 山域・メンバー

山域・山名 会越国境
ルート 柴倉川中流部ゴルジュ帯~柴倉沢
地図 安座(1/25000)
山行内容 沢登り
メンバー (L)都丸(単独、峡彩山岳会)

2. 行動記録

日程 2005/8/20 晴れ
タイム 8/20 入渓(ふれあいの森付近)9:00~鍬沢出合11:30~林道15:00~下山16:30
その他 ルート図

報告(都丸)


入渓直後のゴルジュ


沢幅一杯に水が流れる


トロを堰堤上にふさいだ大木


泡立つ激流へ向かう

常波川の一大支流・柴倉川は磐越県境の木地夜鷹山を源頭とし、スラブの発達した斜面から流れ出る水を集め、中流部では深い谷底を流れ下る。流域のたきがしら湿原や御前ヶ遊窟は景勝地としてよく知られる。

当会では本流の源流部は既に2002年に遡行している。源流部は目立った滝こそないものの、広い谷は明るく開けてナメ床や奇妙な形の釜群、そして紅葉が美しかった。当時、予定では左岸の棒目貫集落付近から沢に下降して本流通しの遡行を目論んでいた。しかし降りた先は深い側壁に囲まれた長いトロが続く区間で、紅葉の時期に泳ぐ気にはとてもなれない。結局大高巻きになり、中流部のゴルジュ帯は垣間見ただけで終わったのだった。

今回は最初から泳ぎを前提とした装備(ウェットスーツ・ライフジャケット)を持参した。可能な限り水線通しに突破するつもりだ。

丸淵集落を過ぎ、ワラビ園へと向かう橋を渡る。砂防ダムの上部、バンガローの並ぶ「ふれあいの森」付近にかかる橋を渡ると、右岸から沢へ降りる道がついている。

入渓直後、関門のように立ちはだかる岩に囲まれた真っ暗な10mの淵を泳ぐ。水量は多い。両岸とも15~20mほどの岩壁がハングして覆いかぶさり威圧感がある。河原に出ると沢床に陽が差し込んで明るくなった。アブの襲来を避けるためにネットをかぶる。しばらく行くと右岸から2段12m滝を掛ける支沢が合わさる。この辺りもゴルジュが発達している。沢幅一杯の水流が緩やかに波立つ。時々足が立たなくなり、10m、15mのトロはいずれも泳ぎを強いられた。左岸の15m滝をかける支沢を見送るとやや開けて15mのトロ。右を小さく巻く。

両岸は再び深いゴルジュ。水面から5~6m上まで草も生えない側壁は増水時の凄まじさを物語る。行く手に3年前に断念した長いトロが見えてきた。長さは40m程もあっただろうか。しかし今回来てみると、真ん中に大木が堰堤状に挟まって小さな落ち込みを作っていた。堰堤状の上には砂利がたまって浅くなっていたので、トロは半分の長さになったことになる。それでも今回は水量が多いので、まともに中央を泳いで突破するのは難しい。左岸をへつり、途中で飛び込んで右岸に移ってまたへつる。大木を足がかりにして再び左岸に移り、落ち込みの上部へ。

ここで一旦浅瀬になるものの、その先で細い沢幅一杯に激流が暴れて白く泡立っている。小釜らしいがどの程度の深さかも見当がつかない。まず右から壁伝いに突破を試みるが、足がつかず浮いた体は押し流される。再度左から挑む。意外にも腰まで水につかる程度の水深だった。壁にへばりつき、水中のスタンスを探しながら水圧に抗してじりじりと前進する。ほんの数mの移動に難渋したが辛うじて通過。鍬沢出合の直上流も小滝と奔流が行く手をふさぐ。いよいよ沢幅は狭く流れは速く、水流に突っ込むのは無謀に思えた。左岸の傾斜の強い側壁を慎重にへつって抜ける。


へつりと泳ぎで抜けた

ようやく流れは穏やかになり、20mの長いトロになる。途中まで右岸をへつり、飛び込んで左岸へうつり、水際にへばり付く。ここも水流がやや速いので流心を泳ぐのは難しいだろう。

柴倉沢を合わせる地点で、本流には大釜をもった4m滝がかかる。水量が少なければ泳いで取りつくことも可能だろうが、今日の水勢では考えられない。巻くとしても大高巻きになってしまう。時刻も昼に近い。無理することもないと、事前にエスケープルートと考えていた柴倉沢を詰めることにする。

柴倉沢も出合直後は楽ではない。4m滝はスタンスがなく、全身をフルに使ったつっぱりで強引に越える。側壁に囲まれた釜つきの5m滝は直登できない。左岸のなるべく緩い斜面を探して高巻いたが、下部は草つきの泥壁で悪い。最後は懸垂で沢床に戻った。ようやくゴルジュも終わり、平坦な河原が延々と続いて退屈する。途中で崩壊地を何箇所か過ぎた。なぜこんな場所に、という意味で存在意義があるとは思えない堰堤2基を越える。等高線がやや密になる標高420mあたりからは小滝がいくつか出てきた。林道が横断する地点で遡行を終える。

なお、柴倉沢は3年前に林道から上部を下降に使ったことがある。30mクラスの大滝二つが連続する区間は一見の価値がある。

遡行終了間際に振り出した雨は下山途中に一時強く降った。クルマに戻るころには雨も上がったが、本流を覗き込むと茶色の濁流が渦巻いていた。雨の降るのがもう少し早かったら……と肝を冷やした場面だった。ここ一週間の局地的な集中豪雨の影響か、本流は入渓時点で水量が多かった。そのためにグレードは幾分上がっていたかもしれない。柴倉川流域は植生の薄い山域であり、雨がちの天候で既に山の保水力は限界に達していたのだろう。だから少しの雨でも増水が早かったのだと想像する。水量の少ない時期にもう一度来て、今回遡行しきれなかった本流を詰めてみたい。

付記:河原に出たら釣りでもしようかな……などという期待はアブの猛攻によって潰えた。魚影は見られた。ヒルはいない。真夏よりも秋口の方が気持ちよい遡行ができるだろう。