冬山合宿 飯豊連峰 飯豊本山

平成14年冬山合宿B隊

日  程 平成14年1月1日(火)~1月4日(金)

山  名 飯豊連峰 飯豊本山

ル ー ト 川入~松ノ木尾根(往復)

メンバー L南山 SL川口 丸山 戸貝 内山(記録)

1月1日

06:20亀田駅発―08:45川入着―09:25川入発―11:30タカツコ沢渡渉―13:4090度カーブ―14:20幕営場所1250m―15:30テントに入る

まだ暗いうちから続々亀田駅に終結。佐藤、星野、込山さんらに見送られ、B隊5名、C隊3名、プラス大江、小山の計10名で2台のデリカに分乗し、明け方の月を見ながら出発した。一ノ木から川入の間の道は除雪されたばかりですんなり行く。川入で身支度、大江、小山さんの激励を受け、歩き始めると直ぐ店じまい中の民宿と飯豊鉱泉が現れた。皆お留守。こんな山深い所だったんだとしみじみ思う。御沢キャンプ場へ向かい歩いていると日が差し、本気で雪目の心配をする。真冬なのに、日陰が恋しいなんて。でも今日はたまたま冬型が緩んだだけ、明日からまた強い冬型に戻るのだ、どうなるのだろうか。キャンプ場にてワカンを着ける。C隊の福士さんが先頭、C隊メンバーが続き、B隊のオーダーだったので、ザックで肩は痛かったものの楽に歩かせてもらう。宮城より単独者あり。前後になる。堰堤を過ぎ、段丘を上がり、杉林に入りしばらく行くと左手が徒渉点となる。A隊のトレースは消えているが、昨日誰か歩いているとは川口さんの話。徒渉はみなササっと通過したが、点石で水が結構流れていて、私は右足を出したら次の左足が出なく、リーダーの助けあり。尾根取り付きは急斜面。福士さん相変わらずトップ、積雪量少なくとも疲れるだろうに何でもないっすよと頼もしい限り。標高上げて1000mともなると風が出始め、雪になった。前方を左右に尾根が走る。そこが90度カーブだよと言われ、先が見えたと嬉しくなった。ラッセルを交替し到着、あとは幕営場所を探す。カーブに着いたのと風雪もやや強くなったのとで急に力が出なくなり、喘ぎ喘ぎ100m程上がり、大きな木が風除けになりそうなところが泊まり場になった。単独者はもっと先まで行った。夜は割合静かになり、外に出ると空の西半分は雪雲、東半分は月とオリオンが良く見える。

1月2日

04:00起床―07:30出発―09:40三国小屋着―10:15三国小屋発―12:20切合小屋着

朝は風弱く、細かい雪。かなり見通しはきく。出発して間もなく下山者あり。昨日の単独行の人だった。三国に近づくとブッシュは少なくなり、尾根はだだっ広くなるが、A隊の残したルート旗が導いてくれた。稜線に出る所にはさらにルート旗をたくさん打つ。ダケカンバに沿って進んでいると右手の雪面にもう長い亀裂が入っていたのには驚いた。8人パワーで思いの外早く三国小屋に到着。ここから荷物をデポしたC隊の皆さんにずっとトップを行ってもらい、七森辺りでさよならする。徐々に風雪が強まり、前の人の足元ばかり追い、周りを見る余裕なし。A隊の残した赤布の脇を通り過ぎるとホッとする。一息入れたいなあと思ううちに切合の合わさる所にたどり着きとても嬉しかった。切合小屋の二階から停滞中のA隊メンバーが、代わる代わる顔を出してきた。温かいココアをどうもありがとう。さらに小屋の中には私達の宿もしつらえてあった。小屋の中で張れる様に工夫した成海さんお手製のナイロン地の蚊帳はどこからでも出入りでき、とても便利。仮の名を成海ハウスとする。午後から天気は小康状態だったが、夕方からは風がひどくなり、二階の出入り口は雪が吹き溜まりになったり、全部飛ばされたり。私にとってトイレに行くのは決死の覚悟が必要だった。外に出る人皆に風と雪の状態を聞き、よし行くぞと外に出たが逃げ帰ったことも。一晩中風は吹き荒れ、明日の心配をしつつ、二日目が終わった。

1月3日

04:30起床―07:40切合小屋発―09:00草履塚引き返す―09:30切合小屋着―11:00切合小屋発―14:00三国小屋着

朝、まだ風は強い。荷揚げ品の中からこのお正月初めてのお餅をいただく。荷上品の缶はお楽しみ袋のようだ。とてもありがたい。今日はA隊と行動を共にする。7時に成海、太子さんが偵察に出る。アイゼンよりワカンの方が有効とのこと。外は細かい雪と強い風。まず3名がルート工作に、次は戸貝さんと私に1名ずつ付いて下さり、後ろに3名。歩き始めは目出帽で息はできないわ、指先はじんじんするわ、皆と一緒なのに心細いような気がした。草履塚の登りはあたり一面白一色で傾斜がどうなっているかも分らない。太子さんはやり投げよろしくルート旗を投げている。そして腿までのラッセル。そうやってルートを決める間も手の先、足の先から冷えていくので、地団駄踏み待つ。皆すごい人達だ、何の目印もない真っ白の空間から手品のように草履塚の標識の前に出たのだ。ここで渡辺リーダーが今日は悪天のためここで引き返す旨伝える。皆で握手し、なんだか胸がいっぱいになった。切合小屋に戻ってからもいっこうに吹雪は収まらず、三国までの下りは楽ではなかった。睫毛が凍って目があかないなんてオドロキ!急斜面ではロープをフィックスしてもらい、慎重に下ろしてもらった。三国小屋は昨日C隊が使ったとは思えない程雪が吹き込み、掃除から始まった。小屋の温度計はマイナス11度。小屋に着いてこんなに嬉しかった事はない。成海ハウスを組み立て、最後の夜だから歌をたくさん歌った。特に「み山飯豊」は何遍も歌い「風うなる、大日は遥か」が皆の胸に染みた。

1月4日

05:30起床― 08:00三国小屋出発― 10:1090度カーブ― 11:10タカツコ沢徒渉― 12:20御沢キャンプ場― 13:20川入

朝まだ風がうなる。視界が利くのと昨日下山のC隊が赤布をたくさん付けて下さったおかげでルートがよく分かる。が、稜線から松ノ木尾根への下降点を示すルート旗は全部吹き飛ばされ、影もない。成海さんに確保された太子さんが下山ののち、後に続く。ダケカンバとさよならした辺りからは膝上ラッセル。90度カーブを過ぎ、さらに下ってやっと快適ラッセルになる。風は無くなりただ雪だけがぼそぼそ降り続く。今日は9人で下りたが、昨日は3人での下り。さぞ大変だったろうと思う。タカツコ沢で飲んだ水はものすごく美味しかった。キャンプ場を過ぎ川入がもう近くなった所で佐藤、込山、坂井厚さんが谷中会長の熱いメッセージとビールを持って出迎えてくださり、私の冬の飯豊連峰初体験は終わった。

最後に・・・私はB隊でとても恵まれていたと思う。経験豊富な先輩方に加え、上りはC隊と、アタックと下山はA隊とご一緒でき、苦労も少なく飯豊の稜線を歩かせていただきました。皆さん本当にありがとうございました。本山は、踏めなかったことよりシュカブラが見れなくて残念だったかな。

記 内山

(B隊リーダー)

初日、B、C合同で出発。馬力のある、若い会員のラッセルで90°カーブで幕営。

2日目三国小屋よりC隊の先導で七森まで支援をいただき、切合の小屋でA隊の出迎えで無事着。七森から種蒔き山までの間で積雪が多く下降地点迄長く感じ、分岐で安堵する。

3日目視界も悪くA隊がルート確認の為、強風の中小屋を出る。じきに戻り本山迄は無理、草履塚を目指し全員出発ルート旗を確認しながら前進。雪が深く腰まで潜る所有り難儀、風が横殴りに吹きつける。太子さんがルート確認の為ザイルを巻き先導。ルート旗を前方に投げつける、ホワイトアウトの中斜度を確認の為との事、今回合宿の申で新しい勉強をさせてもらう。草履塚でも風が強く立っているのがやっとの状態。今回は此処までと本山登頂は諦め次回までお預け、小屋に戻り荷物を撤収三国の小屋迄下る。前日に比べ雪も多く時間がかかる。小屋で最後の夜を楽しむ。

4日目最終日、今日は川入り迄下るだけ、気持ちも楽。それでも気をしきしめ出発。松の木尾根に乗ると、また雪が深くなりラッセルの交代が早くなる。下るに従い、気温も上がり雪が重くなる、林道に乗り出迎え隊のビールの差し入れをうけ全員で乾杯。今回大勢の支接をいただき無事終了感謝の気持ちでいっぱいです。

本山登頂ならず共再度挑戦せよとの飯豊の神の声と思い、次回迄体を鍛え直す気でおります。

記 南山

平成14年冬山合宿C隊

メンバー L谷中、松原、福士

C隊感想

正月三が日しか休めない3人(谷中、松原、福士)でメンバー編成。入山初日と2日目の途中まではB隊と行動を共にした。

B隊と行動を共にした部分は、B隊の報告に委ねることとし、その後の行動とC隊全体の感想を記す。

B隊の支援を終えて、三国小屋に戻る。小屋は我々3人の貸切。夜半に時折風雪が小屋をたたく音で目がさめた。

3日はただひたすら下山するのみだが、難儀しそうな予感があり、7時半には小屋を出た。案の定、早速腰近くの新雪と数十mの視界。年の暮れにA隊がつけてくれたルート旗に導かれ、無事、雪堤を下り松ノ木尾根に入る。腰までのラッセルをしながら3人で下るのもなかなか骨が折れる。時々尾根筋がはっきりしないところで細かく確認しながら、90度カーブの泊場地点まで、ノンストップで到着。5分ほどの休憩で再び出発。「標高1000mの下になれば、このラッセルも楽になるよな」と慰めにも似た希望的観測を口にしながら下るが、一向にその気配がない。90度カーブの下部から松ノ木尾根は細く一本のすっきりした尾根になるが、ここに足を踏み入れると、稜線上につけた深いトレールの両脇から、両側の谷に向かって新雪の表面が薄く雪崩れていく。新雪雪崩の場面が頭をよぎり、後ろを振り返って松原さん、福士君にそれぞれ20m以上離れて下ってくるように指示する。この尾根は、厳冬期に今まで何度も登下降しているが、こんな危険を感じた下りは初めてだった。2,3度、小さな支尾根に入りそうになり、戸惑う場面があった。そのたびに松原さんは先頭に立ち、偵察しては適確なコメントを出してくれて大変助けられた。ほとんど休みない難儀な下降が続き、12時ころにタカツコ沢を徒渉。なんと、ここから三国小屋まで登りに要した時間よりも、下りのほうが30分ほどではあるが余分に時間がかかったことになる。ここで一休み。深い積雪の合間から顔を出している沢水にのどを潤し、やっと生きた心地がした。しかし、ここからがまだ難関。更に深い柔らかい雪に腰の上までつかり、段丘の上の杉林を多少迷走気味にラッセルし、最後は少し強引に段丘を降りて堰堤に到着。なんとそのすぐ先には、込山さんと大江さんが迎えに来てくれているではないか。持ってきていただいたビールが五臓六腑に染み渡り、やっと満面の笑みがこぼれた。小屋を出てからほとんど休まず行動した6時間後のことだった。

今回の収穫は、久しぶりに「飯豊の雪」を堪能させてもらったことと、新人福祉君の活躍ぶりを見せてもらったこと。中年2人に付き添われたバリバリの新人福士君は、登りはじめからすぐ後ろに続く谷中から途切れることない講釈と指示を浴びながら、相当の重荷をものともせず、先頭に立ってラッセルをリードしつづけた。中学生のころから近くの山でラッセルの真似事をしていたとはいうものの、群馬県でのことであり、12月にほんの1,2度訓練しただけで使い物になるかどうか、正直言って多少の懸念はあった。しかし、何事にも強い興味を示し、労力を惜しまない積極性は本当に頼もしく、ラッセルも基本的には形になっているのには驚いた。今後も、四季を通じて様々な山行に参加していっぱい経験を積み、越後の山のすばらしさを感じてほしいものと願っている。

記 谷中